林蘊蓄斎の文画な日々
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吶喊

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makino氏より珍しい画像を頂戴した。

《魯迅『吶喊』第17版の奥付です。『吶喊』は魯迅の第一作品集で、1923年、新潮社から出版され、1926年、改版されて北新書局から「烏合叢書之一」として出版されたとのこと。この第17版の出版年はわかりませんし、9角という値段が高いか安いか?ですが。》

中国の国民政府が管理通貨制度に移行したのは一九三五年。そのとき法幣1元=イギリス貨幣1シリング2.5ペンスの固定相場制だったそうだが、一九三〇年に日本が金本位制にしたときが10円=1ポンド5シリング7.5ペンスだった(三上隆三『円の社会史』中公新書、一九八九年)。これをペンスに換算して比べると元は円のおよそ半分くらいのレートだったようだ。仮にその頃の1円を今の3000円と考えれば、1元は1500円でその0.9倍が9角となる…のどうか。数字には弱いので詳しい方にお教え願いたい。

「魯迅」の検印は印のデザインとしては取り立てて特徴はないように思うが、きっちりときれいに捺印されているのが印象的である。
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築添正己『いまそかりし昔』(りいぶる・とふん、二〇一一年)に「内山書店と魯迅」という一文がある。上海の魯迅記念館に築添さんの母方の祖父・奥村博史が描いた魯迅の臨終の肖像「長眠魯迅先生」が所蔵されていることについて。一九三六年八月に博史が上海の内山書店を訪ねたところ、その早朝に魯迅が亡くなっており、内山完造の依頼で博史がデスマスクを描くことになったそうだ。そのスケッチは未亡人に贈られた。
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内山完造は一九一三年に参天堂の大学目薬販売員として中国にわたった。営業マンとして外出の多い夫の留守に妻みきが内職のつもりで始めたのが内山書店だったという。クリスチャン関係書から始めて手を広げ、中国では翻訳されていない欧米の書物を日本語で読むという中国知識人の評判を呼んだらしい。

《夫妻が「人を信用する」というクリスチャンとしての信条から、日本人だけでなく中国人、朝鮮人を差別することなく貸売りをして、払いが遅れても催促をしなかった事が口伝てに広がって、中国人の客が日本人の客を上まわる程になったのだろう。
 内山書店は順調に発展し、店を広げることも出来た。その広くなった店の間に完造はテーブルと椅子を置き、訪れる客にお茶を供したから書店は日本人、中国人が集まるサロンの様になったが、いつの間にか、そのサロンの常連になったのが魯迅だった。内山サロンで会話を交わすことが度重なるうち、完造は魯迅という人物に深い敬愛の念を持つようになり、魯迅もまた完造に信頼を寄せるようになった。当時、魯迅には国民党政府から三万元の懸賞金が懸かっていると噂され、何時密告逮捕されてもおかしくない立場に置かれていた。魯迅の終の棲家になった内山書店に近いアパート(現在、魯迅博物館になっている)は、そんな魯迅の身を気遣った完造が手配したものだった。》

『吶喊』の諸作は傑作揃いだが、四十六七歳の頃に執筆した『朝花夕拾』という回想文集が好みである。なかでは「藤野先生」という日本留学時代の思い出も悪くはない。しかしやはり子供時代に読んだ本に関するエッセイ「阿長と山海経」は何とも言えず趣が深い。いずれ引用しよう。
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by sumus_co | 2012-02-09 22:13 | 古書日録
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