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銀座百点

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『銀座百点』(銀座百店会、表紙=佐野繁次郎)を四冊頂戴した。いずれも昭和三十年代のもの。三丁目の夕日。久しぶりに読み直すと、達者な随筆ぞろいである。第四号に武者小路実篤が「銀座]と題してこんな逸話を書いている。

《又銀座に勧工場があつたのを僕はよく覚えてゐる。僕は今の月ヶ瀬あたりにあつたやうに記憶してゐるが、僕の記憶はあてにならない。岸田劉生が子供の時、この勧工場にねん土で指をつくり、それの切り口を赤くぬつて、いかにも本当の人間の指が切られてゐるやうにつくつて、この勧工場に落としておいて、皆が見てどう思ふか見て居たら、やがて皆がそれに気がつき、大さわぎがおき、人だかりがした。誰も気味悪がつて、手にとつて見るものがない。岸田はあまり効果が大きすぎたので、すつかり怖くなつて、どうなるかと見て居たら、その内誰かゞひろつたか、杖でさわつかたのか、もう忘れたが、人間の本物の指ではないことがわかり、笑ひ話になつて皆が立ち去つたそ[ママ]うだが、一時はどうなるかと思つて、岸田はふるへて居たさうだ。岸田自身からこの話を聞いて大笑ひしたが、岸田ならやりさうなことだし、又皆がだまされる程、本当そつくりにつくれたらうと思つた。岸田が子供の時に既に自分の才能をあらはした話としても面白いと思つた。》

武者は勧工場を《今の月ヶ瀬あたり》としているが、菓子舗・月ヶ瀬は五丁目一番地なので記憶違い。勧工場は銀座大通りの新橋際、南金六町(銀座八丁目)にあった。松崎天民『銀座』に載っている博品館の広告が《昔しを今に依然として其勧工場気分を漂はせてをります》とうたっているように博品館というデパートになっていた。

もうひとつ岸田劉生が出て来るエッセイを見つけた。木村荘十(小説家、木村荘八の弟)「銀魂」。

《強く印象に残つているのは、家兄荘八が、この銀座で、岸田劉生と草土社の旗上[ママ]げをしたことである。京橋際の、今の銀行になつている角に読売新聞社があつてその三階?が展覧会の会場だつた。その頃の荘八は大変なハイカラで、髪を長くしてコールテンの服に、ボヘミアンタイかなんかしていた。
 発表された絵は、後期印象派とか何とかいうので、私には奇怪に見えた。世評も二つにわれたらしかつたが「眼さむれば、既に有名なりき」というほどのではないにしても、これで草土社岸田・木村其他の面々は、その存在を確認させてしまつた。
「やりやアがつたな。俺も何か‥‥」と思わせるに十分過ぎる位だつた。》

草土社の実質的旗揚げ展は一九一五年一〇月、現代の美術社主催第一回美術展覧会(銀座、読売新聞社)である。翌年四月には第二回草土社展として銀座・玉木美術展で開催された。有名な「切り通しの写生」はこの第二回展に出品されている。とすると少なくとも劉生の出品作は後期印象派風ではないので、荘十の回想は、ひょっとしたらそれに先立つフュウザン会の展覧会(同じく読売新聞社で開催された)と混同しているのかもしれない。

こちらは第六十一号(一九六〇年一月)に掲載されている新橋花街の古い写真からきれいどころ《中央は新金萬の重春(植松りうさん)の明治手古舞姿》。
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同号に載っているソニーTR-610の広告。ロゴの下に小文字で《テープコーダーのソニー株式会社》と記されている。テープコーダー…(登録商標だそうだ)。
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by sumus_co | 2012-02-04 20:34 | 古書日録
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