近々大阪でブックデザイン展を開かれるデザイナーの
高橋善丸さんは薬袋などのコレクターである。『お薬グラフィティ』(光琳社出版、一九九八年)に続いて昨年
『くすりとほほえむ元気の素/レトロなお薬袋のデザイン』(光村推古書院、二〇一一年)を刊行されたようだ。ということで思いついて取り出したのがこの薬袋(?)
四季とも風はらひねつさましづつう
のぼせ引さげ暑気はらひほうそう
はしか其他諸ねつ一切ニよし
そめいさん
奈良市西御門町
官許本舗(や)安田延寿堂製
同じく「そめいさん」の小袋。天狗のマークが朱色で印刷されている。多少文言が異なる。
四季風はらひ、ねつさまし、づつう、阿つさあたり、
さむさ阿たり、ほうそう、はしか、里ゆうまち、
其他熱病一切によし
そめいさん
奈良市内侍原町
官許本舗(や)安田延寿堂製
いずれも木版摺りだから時代は明治も前半だと見ていいようにおもう。内侍原町(なしはらちょう)は奈良市の中心部。安田延寿堂で検索してみたが、めぼしい情報は得られなかった。他に一角丸、貴一丸などの丸薬も製造していたようだ(薬袋あり)。ろめいさん…と初めは思ったのだが、貴重なコメントをいただいたので訂正する。そめいさん=蘇命散(これが奈良の配置薬の始まりとか、十八世紀初め)。こんな引き札も出ていたので「そめいさん」で間違いなし。
「そめいさん 大和今住 中嶋太兵衛」
http://www.yhmf.jp/pdf/activity/adstudies/vol_04_03.pdf