林蘊蓄斎の文画な日々
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屋根の上の牛

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これも姫路で買った絵葉書の一枚。フランシス・ピカビア「L'OEIL CACODYLATE」。コラージュに対する興味がずっと続いているので目がとまった。おもしろいなあ、と思って買って帰ったわけだが、まったく別の必要があってマン・レイの『マン・レイ自伝 セルフポートレイト』(美術公論社、一九九三年三刷)をぱらぱらめくっていると、いきなり次の文章が目に飛び込んで来た。

《ある日、フランシス・ピカビアの家での昼食に招かれた。彼はニューヨークには何度も旅行していて、そのあるときにわたしは彼と偶然に会ったのだったが、言葉の壁がいつも障害になっていた。このたびは彼はダダイストたちと反目しあっていて、ニューヨークで彼も寄稿していたスティーグリッツの『二九一』の続編ともいうべき、『三九一』という自分の雑誌を出していた。小男で、丈を高くするために踵の高い靴を穿いていたが、著作においても、非常な魅力と知性を備えた人間だった。彼の居間には大きな画布が立ててあり、それは訪問客の書いた文章と署名で埋っていた。床に絵具の入った壷があり、わたしも署名するようにもとめられた。のちにこの画布は、作家、音楽家、画家、そして上流社会の人々が足繁く出入りした有名なナイト・クラブ「屋根の上の牛」に何年ものあいだ掛けられていた。》

そういうことだったのか、まさに「L'OEIL CACODYLATE」! いまいち意味不明だが、カコディラートは砒素とメチルから合成された塩(体に悪そう)で、ウィユは目だ。目から毒塩!

AU TEMPS DE L'ŒIL CACODYLATE
http://dadaparis.blogspot.com/

文中キャバレー「屋根の上の牛」の名前はダリユス・ミヨーの超現実主義バレエ「屋根の上の牛 Le Boeuf sur le Toit」(一九二〇年に初演、台本はジャン・コクトー)に由来する。と日本語のウィキには書かれていて、キャバレーの方は一九二二年にオープンしているし、ジャン・コクトーがひいきにしていたわけだから、それが妥当なのだろうが、なぜかフランス語のウィキは「faire un boeuf」(ジャム・セッションをする)というミュージシャン用語からきたとしている。

パリのマドレーヌ寺院の近くボワッシ・ダングラ通(28 Rue Boissy d'Anglas)で一九二八年まで、その後その界隈で三度移転しているようだ。今もブラッスリー・ル・ブッフ・シュル・トワと名乗って営業している。ジャン・セルズ(Jean Selz)『Foujita』(Crown Publishers, 1981)にアルバム「ユキの日記」(一九二五)からとして次のようなイラストが掲載されていた。これは前から見つけてあったのだ。
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「Doucet at the Piano at the 《Boeuf sur le toit》」とあるが、このドゥーセは誰だろうか。ピアノに向かっているのだからベルギー人のクレマン・ドゥーセ(Clément Doucet)か? クラシック・ピアニストだったがアメリカでジャズに転向した。二大戦間にウィーナー(フランス生れなので発音はウィエネ?、Jean Wiener)とのデュオで知られていたそうだ。黒人(?)ドラマーにも名前が書かれているがちょっと読み取りにくい。ウィリアムズ?
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上の寄せ書きには、イサドラ(ダンカン)、シャネル、ヴァランティーヌ・ユーゴ、ツァラ(ブルトンは前にリンクしたラジオ放送では一貫して「ザラ」と濁って発音していた)、バンジャマン・ペレ、リゴー、スゴンザックなどの名前が読み取れる。ただ、マン・レイは見当たらないようだ(よく見ればあるのかも?)。
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by sumus_co | 2011-10-13 21:56 | 古書日録
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