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木喰と松尾の神象

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『木喰彫刻展』(京都新聞社、丸物百貨店、一九六六年一月二九日〜二月一〇日)図録より「地蔵菩薩像」(日本民芸館蔵)および「馬頭観音像」(長岡市・室生寺)。昔、学生時代にギリシャ美術の授業で「アルカイック・スマイル」ということを習った。古代ギリシャのアルカイック期(紀元前六世紀)に微笑むような表情の彫刻が流行したらしい。ギリシャ古典期に見るようなリアリズムではなく彫刻の作風もアルカイック(古拙な)もので、おそらくその表現方法がインド・東南アジアから朝鮮や日本の仏像へ引き継がれているように思われる(弥勒菩薩半跏思惟像がその一例)。

享保三年(一七一八)、木喰は山梨県に生まれた。二十二歳(以下数え年)で仏門に入り、四十五歳にして木食観海上人より木食戒を受け「木食行道」と改名。五十六歳にして日本廻国千体仏成就を発願し、関東一円、奥州から北海道へ渡る。六十代には栃木へ下り新潟へ向かう。中部地方を廻る。七十歳頃、京都、奈良から四国へ渡り、九州宮崎国分寺の住職として十年を過ごした。七十六歳で「木喰五行菩薩」と改名。八十一歳で九州を発ち山陰山陽道から四国そして近畿地方、東海地方を経て八十四歳のときに帰郷。さらに新潟へ。百体ほどの仏像を新潟県下に残している。八十九歳で帰郷後、また京都に出て作象、「木喰明満仙人」と名乗る。九十にして千体を成就し二千体を目標とする。長野から甲府へ入った後、数え九十三歳、文化七年(一八一〇)六月五日入寂。

五十六歳から発願して仏像を作り始めたとは知らなかった(皆さん、何事も遅いということはないですぞ)。そう聞くと、富岡鉄斎もそうだが、晩学の人に有り勝ちなずうずうしいというか観念的で自在な作風が理解できるような気がする。

で、その微笑だが、先だって、京都嵐山の松尾大社で平安後期の男神像、女神像などを拝観したときに、あ、これは木喰だなと思ったのである。いや、もちろん木喰が真似した(よく言えばインスパイアーされた)という意味。松尾さんの神像は現存最古の部類に入るそうで、とくに微笑神は末法思想流行の平安後期には穏やかな表現が求められたためではないかと考えられているそうだが、そうだかどうだか、笑う神像の系譜はずっと水脈として古代から続いていたのではなかろうか。

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松尾大社は醸造の祖神として知られる。祭神は大山咋神(おおやまぐいのかみ、山王神)、中津島姫命(なかつしまひめのみこと、海上守護神)。創建は大宝元年(七〇一)、現在の社殿は応永四年(一三九七)建造の重要文化財。

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最後の写真は重森三玲の設計になる曲水庭園の一部。
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by sumus_co | 2011-10-04 21:11 | 雲遅空想美術館
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