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寓話および死者の対話

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『オックスフォード古書修行』を読んだせいか、洋古書を触ってみたくなった。折よくアトリエ掃除の最中に絵のモチーフ用にとかなり前に買った『Fables And Dialogues Of The Dead』(The Third Edition Corrected, Printed for D Browne, C Corbett, and J Jackson, London, 1735)が転がり出てきた。架蔵の洋書の中では最古のもののはず。あれこれ引っくり返したり、かじり読みをしたりして過した。

これを求めたのは今はなき神戸の某書店。そこの値段表が見返しの遊紙の間に挟まっていた。どこで買ったかは覚えていたものの価格はすっかり忘れていた。製本壊れで、おや、よく買ったなという値段である。アベブックス(前にも書いたがパリの古本屋が電話でこう呼んでいた、Abebooks.com)に多分同じと思われる版が一冊だけ出ているが、その値段の三分の一程度だから、壊れ本としてはきばった値付けだった。

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著者はフランス北部カンブレー(Cambrai)の大司教だったフランソワ・フェヌロン(François de Salignac de la Mothe-Fénelon, 1651-1715)。その英語版である。ルイ十四世の孫、ブルゴーニュ公ルイ・ド・フランスの教育係だった。このルイは一七一二年に麻疹の大流行のため二十歳で命を失っている。内容はタイトル通り、寓話と死者の対話の古代篇と現代篇。

寓話はラ・フォンテーヌのようなお話(同時代人である)。たとえば「二匹のネズミ」。猫に怯えて暮らすのがいやになったネズミが猫のいない理想郷インディーズ(Indies)へ行ったはいいが、ネズミたちの内乱で殺されてしまうという皮肉なお話。もうひとつ「動物たちが王様を決めるために集まる」は百獣の王だったライオンが死んだので動物たちが次の王様を決めるために集まった。ライオンの息子はまだ幼かった。そこでまず名乗りを上げたのが熊、次に象が、馬が手を上げた。さらに猿が「おれ以上王様にぴったりなものはいないぞ、だって人間にそっくりだもの。人間は自然の王様だからね」と主張すると、鸚鵡が「人間に似てるたってそんな顔じゃだめだよ、ぼくは人間の声が出せるんだから、ぼくが王様になるべきだ」と言い出して大騒ぎ、けっきょく智慧と力のある象さんに決まったとさ。

死者たちの対話はむろん架空の対話。古代篇ではヘラクレスとテーセウスだとかソクラテスとアルキビアデースだとかカトーとキケロなどなど、なかにはカリギュラとネロという一見おどろおどろしい組み合わせもある。現代篇は……歴史に疎いので面白さがもうひとつ分からないが、ヘンリー四世とシクトゥス五世とかリシュリュー卿とジメネス卿とかリシュリュー卿とマザラン卿など。まあ、要するにこの本はルイに王道を歩ませるべく導くための教科書か副読本のようなものだったらしい。

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最後尾の見返し遊紙に落書きがある。鉛筆か銀筆で何かのオーナメントを模写したもののように思える。今で言えば、中学生か高校生くらいの手だろうか? いつの時代も落書きの楽しみは格別なもの。ただしわれわれの時代は麻疹でばたばた死ぬ心配はなくなった(言うまでもなく、その代わりに核の恐怖を背負っているわけではあるが)。
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by sumus_co | 2011-09-29 22:15 | 古書日録
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