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死亡記事切抜帳

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アトリエの押入を整理していると古い切抜き帳が出てきた。一九八三年から九三年までの十年間。B5ノート四冊に死亡記事と追悼記事の切り抜きを張り付けてある。上はその中の一冊。アスタルテ書房の包み紙で手製のカバーを作ったもの。この絵柄の包み紙は今はもう使われていないので、けっこう貴重かも。

切り抜いてある人物は、やはり美術、文学関係が多いが、俳優やミュージシャンなどもけっこう拾っている。この時期には神戸に住んでいたので神戸新聞から選んだ追悼記事を二点紹介しておこう。当時は朝日新聞を購読していたが、隣家から読み終わった神戸新聞をもらって目を通していた。

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一九八七年六月一一日神戸新聞、池田満寿夫「森茉莉さんの思い出」。《森鴎外の長女で作家の森茉莉(もり・まり)さんが心不全のため東京都世田谷区経堂五ノ二三ノ二二、フミハウス二〇三の自宅で死去しているのを八日午前に訪ねて来た家政婦が見つけた。八十四歳》(六月九日神戸新聞)。

《私は十五年ほど前にアメリカから帰国していた時、一度だけ下北沢の茉莉さんのアパートへうかがったことがある。当時腎臓(じんぞう)を悪くしておられ、顔色がさえなかったが、食事はバラの花びらを食べていると言うのでびっくりすると、本当にそうなんだと証(あか)すためにアパートへ案内されたのである。「バラを食べるマリア」。まさに森茉莉にぴったりである。それから私が日本にいる時は彼女の誕生日にパラの花束を贈ることにしていた。バラに埋まっている茉莉さんを想像するのがうれしかったからだ。》(池田満寿夫「森茉莉さんの思い出」)

森茉莉が歿した前後には数々のスターたちが他界している。二月二二日にアンディ・ウォーホル、五月一四日にリタ・ヘイワース、六月三日にアンドレス・セゴビア、六月五日に高橋新吉、六月六日に三上次男、六月一七日に高田博厚、六月二二日にフレッド・アステア、七月三日に木村忠太、七月一五日に富士正晴、八月一日にポーラ・ネグリ、八月五日に澁澤龍彦、八月一六日に栗島すみ子、八月一八日に深沢七郎……。

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一九八七年七月一七日神戸新聞、松田道雄「富士さんのこと」は名文である。

《富士さんが亡くなって残念だ。もう深夜電話はかかってこない。酔ってかけてくる電話は、はしごであることがおおかった。いままで桑原はんと話してたんやといってかけてくる。
 かけた相手が不在だと、その妻女と話しはじめ、それが長電話になり、妻女も不在だと代って出た妻女の母堂と話がはじまり、この人ともテレフォン・フレンドになり、つぎは直接老女にかけるというようなことになっているのを彼自身からきかされた。彼が相手にえらんだ老女は、みなどこか傑出した人物で、儒者の娘とか、京都の旧家の娘とかだった。》

富士の死亡記事の冒頭は以下の通り。

《関西文壇の長老で、竹林に囲まれた自宅に住み「竹林の仙人」と呼ばれた作家の富士正晴(ふじ・まさはる)氏=本名富士正明(ふじ・まさあき)=が十五日午前七時、急性心不全のため大阪府茨木市安威二ノ八ノ四の自宅で死去した。七十三歳。徳島県出身。葬儀は故人の遺志で行われない。》(七月一六日神戸新聞)
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by sumus_co | 2011-09-25 20:58 | 古書日録
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