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狼藉集

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草森紳一『狼藉集』(ゴルゴオン社、一九七三年一二月五日、装幀=羽良多平吉)。まだあとがき「魚座の弁解」を読んで、本編を二、三つまみ食いしただけなのだが、あとがきは草森による草森論になっておりスコブル面白い。以下は出版の経緯について語られた部分から。

《この雑文集は、一九六三年から一九七二年までに書いた五枚以下の文章を収録したものである。ただし十数篇はやや長いものが混入されているし、マンガ、写真、テレビCM、インタビューに関する掌文は、例外を除いて、省いたのだが、百篇にはなった。》(「魚座の弁解」)。

《ゴルゴオン社の来住君が、ある日、本を出させて欲しいと言ってきた。この会社に集っている人は、みな二十三、四の青年でみなそれぞれ別に職業を持っていて、年に一冊か二冊出していくのだという。取次店も通していないという。その主旨が気に入ったので、私は承知し、どういう原稿を集めて一冊にしようかと相談すると、短いものばかりがよい、と来住君は言った。》(同前)

奥付に発行者となっているのは村松俊彦。NDL-OPAC では以下の書物が確認できた。

1. 困難な時代の詩人 / 長田弘. -- ゴルゴオン社, 1971
2. 戦場からの手紙 / ジャック・ヴァシェ[他]. -- ゴルゴオン社, 1972
3. 困難な時代の詩人 新装版/ 長田弘. -- ゴルゴオン社, 1973
4. 戦場からの手紙 新装版/ ジャック・ヴァシェ[他]. -- ゴルゴオン社, 1973
5. 雅歌 / 秋吉輝雄. -- ゴルゴオン社, 1973
6. 狼籍集 / 草森紳一. -- ゴルゴオン社, 1973

ゴルゴオン社はこの後「夢魔社」を経て「村松書館」となる。

1. アリス煉獄 / 穹野卿児[他]. -- 夢魔社, 1974
2. 戦場からの手紙 / ジャック・ヴァシェ[他]. -- 夢魔社, 1974

1. 横光利一論 / 岩尾正勝. -- 村松書館, 1975
2. 戦場からの手紙 / ジャック・ヴァシェ[他]. -- 村松書館, 1975.12
3. だが、虎は見える / 草森紳一. -- 村松書館, 1975
4. 酒井宗雅茶会記 / 粟田添星. -- 村松書館, 1975
  [以下略]

『戦場からの手紙』はよく売れたようだ。ジャック・ヴァシェ(Jacques Vaché, 1895-1919)は若きアンドレ・ブルトンに強い影響を与えた男、麻薬の吸引によって事故死した。

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カバーがなくて幅広の帯というのは今でこそそう珍しくはないけれど、この時代にはかなりとっぽいデザインではなかっただろうか。
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表紙をモノクロにして見返しをカラーというのも捻ってある。しかも継ぎ表紙なのだ。
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腕によりをかけて凝りに凝った装幀をほどこしたデザイナー羽良多平吉についても一文がしたためられている。見開きの頁に著者と装幀者の写真が載っているというのもちょっと珍しい(向かって左が羽良多)。これは肖像写真の掲載を渋っている草森に「僕の写真もいれさせてください」と《羽良多君》が主張して実現したのだそうだ。

《羽良多君は、昭和二十二年吉祥寺の生れ。東京芸大デザイン科卒の俊英、などと書きだせば、いっぱしの紹介にはなるけれど、私が最初彼に逢ったのは、新宿の「プレイマップ」の編集室であった。「草森さんですね」とまだ紹介もされていないのに、のっけから話しかけてきた青年がいた。それが彼であった。》

《羽良多君は、妙な可愛げをもった青年で、真正面な上昇性をもっている。それは羨しいほどに素晴しい。その奇妙な味をもった資質は、彼のまだ未知数な、これからのデザインやイラストレーションの活動を、大きく開花させ、羽ばたかせる、その原動力となるだろう。》

「魚座の弁解」で草森は自分自身のことを「ゴミ箱」のような人間だと定義している。大学卒業をして東映の入社試験を受け、演出・脚本・プロデュースを志望すると発言して失敗したときにこう感じたのだという。

《どうして自分はなにか一つに絞れない人間になってしまったのだろうか、と言うことであった。あの面接のさなかでも、もう一人の自分は、冷静に、この国は専門一筋でないと生きにくいらしいぞと、呟きかけていた。
 私は、この苦い経験から、専門一筋の人間に切りかえたかと言えば、そうではなく、自分のやりたいことは、臆面もなくなんでもやろうということであった。それが、自分の生まれついての性であるように思えてきたからである。》

《だが、私流に言えば、一つである。》

《その専門家であることを尊しとする風潮は、あまりにも偏狭ではあるまいか。》

このくだりを読んでピンときた。岡崎氏が28日の「okatakeの日記」で引用している「あいおい古本まつり」のトークにおける古書現世向井氏の言葉だ。これはなかなか鋭い発言であり、草森の論旨とみごとに響き合う。

《これからの古本屋は専門店化しないと、とよく言われてきたが、それは逆。古書現世は、むしろ十年前に専門性を捨てた。》

だから、古書現世はゴミ箱的な古本屋だと言いたいわけではないので、念のため(なお本書を古書現世の盟友・立石書店から求めたのも何かの縁)。

草森の自己分析、あるいはこれはいわゆる「マルティテュード」というやつではないか。現代思想は生かじりもいいとこなのだが、専門性を「帝国主義」と置き換えれば、統合されたひとつの勢力でありながら多様性を失わない立場を草森は自分自身のあり方において主張しているように思えてならない。
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by sumus_co | 2011-08-29 21:48 | 古書日録
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