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水郷記

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山崎剛平『水郷記』(砂子屋書房、一九三八年一〇月五日)の裸本。函があれば、それなりに高価な本だが、いかんせん函はなし。山崎の始めた砂子屋書房については詳しいサイトがあるので参照されたい。

砂子屋書房史
http://kikoubon.com/suna_syo_si.html

たとえば太宰治の第一小説集『晩年』(一九三六年)はこの砂子屋から出たのだが、太宰は「砂子屋」(初出『文筆』一九四〇年一〇月三〇日号)という文章にこう書いている。

《書房を展開せられて、もう五周年記念日を迎えられる由、おめでとう存じます。書房主山崎剛平氏は、私でさえ、ひそかに舌を巻いて驚いたほどの、ずぶの夢想家でありました。夢想家が、この世で成功したというためしは、古今東西にわたって、未だ一つも無かったと言ってよい。けれども山崎氏は、不思議にも、いま、成功して居られる様子であります。山崎氏の父祖の遺徳の、おかげと思うより他は無い。ちなみに、書房の名の砂子屋は、彼の出生の地、播州「砂子村」に由来しているようであります。》

《さいわい、山崎氏には、浅見、尾崎両氏の真の良友あり、両氏共に高潔俊爽の得難き大人物にして帷幕[いばく]の陰より機に臨み変に応じて順義妥当の優策を授け、また傍に、宮内、佐伯両氏の新英惇徳[とんとく]の二人物あり、やさしく彼に助勢してくれている様でありますから、まずこのぶんでは、以後も不安なかるべしと思います。山崎氏も真の困難は、今日以後に在るという事に就[つ]いては、既に充分の覚悟をお持ちだろうと思います。変らず、身辺の良友の言を聴き、君の遠大の浪漫を、見事に満開なさるよう御努力下さい。》

砂子は兵庫県赤穂市砂子(ヒョウゴケン アコウシ マナゴ)のこと。だから「まなごやしょぼう」と読むのが正しいらしいが、誰も読んでくれないので「すなごや」でも善しとしたらしい。この名を引き継いで現在もある同名の出版社は「すなごや」と読む。

上記「砂子屋書房史」を見ていると、昭和十一年二月二十二日に外村繁『鵜の物語』の出版記念会が浅草双葉で催されており、その発起人のなかに淀野隆三の名前が出ている。これについて淀野日記では何も触れられていないようなので、少々残念。

砂子屋書房は山崎の自宅(東京市下谷区上野桜木町二七)にあったが、本書に収められている「鳶」には当時の上野の様子が見事に描き出されている。

《七月十五日
 水水しい朝空に五位鷺の一群が現れた。二三百羽はゐよう。一群は美術学校の大きな赤壁になだれ落ちる。その羽ばたきがまだをさまりきらない中に、ふと現れた一羽の大鳶が非常な勢ひで飛んで来て、見る見る五位鷺の群を追散らしてしまふ。ひとしきり孤軍奮闘した鳶はそれでもまだ飽き足りなかつたか、博物館の方へ逃げてゆく一団に向つて更に追撃をはじめた。そして表慶館の上空あたりで追付き、再び敵軍を滅茶苦茶に擾乱した。それから悠悠と引上げて来て、赤樫の上を一巡し、その隣の校舎の屋根へ下りて五位鷺の群を睨返す。ーー八方に散乱れた一群はやがてまた漸次寄集りながら竹の台の上あたりを広小路の方へ移つてゆき、やがて消えていつた。》

「美術学校の大きな赤壁」は煉瓦塀だろう。「表慶館」は今も博物館の敷地内にある。「竹の台」は上野公園の大噴水のある広場のこと。かつて寛永寺の根本中堂があった。山崎の文章はなかなかしっとりしたもの。「島の秋」など佳作と思った。ただひとえに小説としてのみ考えれば、やはり弱いと言わなくてはならない。もっとあざとく、たくましいところも欲しい。

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「或る日」という随筆に次のような描写がある。尾崎一雄の『暢気眼鏡』(一九三七年)の検印について。芥川賞を受賞した喜びが素直に伝わってくるように思う。

《江島印房へ寄つて先日誂へて置いた印を受取る。印材は竹根で、今度の暢気眼鏡普及版の検印用だ。》

《夜、印を私が持つて帰つてゐたため、手助けになると思つて、かねて用意して置いた白い朝鮮の紙に捺しはじめた。けふの和やかな団欒を憶ひながら、また金馬の落語を憶出して噴出したりしながらトントンと捺してゐると、だんだん調子が出て来て面白く、夜なかまで続けて二千枚ばかり押した。》

おそらく本書のこの「山崎」印も竹根ではなかろうか。
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by sumus_co | 2011-08-17 21:17 | 古書日録
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