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LE FIGARO, 20 AOÛT 1870

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現在刊行されているフランスの日刊紙としては最古参の『フィガロ』紙、一八七〇年八月二〇日号。明治三年。タイトルの脇には主筆H. ド・ヴィルメサン(1810-79)と大書してある。『フィガロ』は一八二六年創刊、六六年よりヴィルメサンの推進によって日刊となった。

『ゴンクールの日記』(斎藤一郎編訳、岩波文庫、二〇一〇年)上卷に二度ヴィルメサンの名前が出ている(原本では他にも出ているようだ)。最初は一八五六年五月一〇日、

《何の詩的感興もなく、フィガロ社主をやっているヴィルメッサン程度の才能すら持ち合わせぬその日暮らしの輩によって》

もう一ヶ所は一八六一年一〇月一〇日、

《連中はアレヴィーからクレミュー、クレミューからヴィルメッサン、ヴィルメッサンからオッフェンバックにいたるまで、確固たるみずからの小世界をかたちづくっている》《この種族、この連中、この新興の若者たち、この若い世代は、証券取引所の取引のあいまに、なにかどたばたのヴォードヴィル喜劇のあと産み落とされたような人たちだが、そのあとひとりでに成長し、流行歌の一節がいくらくらいになるかをもっぱら計算するまでに成長しているのだ》

一八七〇年八月二〇日と言えば、普仏戦争が始まって一月経った頃である(七月一九日開戦)。結局フランスはプロシアに手もなく捻られてしまいパリも占領されるのだが、これについては以前、当時のパリに籠城していた日本人の書いた書物を紹介したことがある。

渡六之助『法普戦争誌略』
http://sumus.exblog.jp/8961840

この『フィガロ』の冒頭ももちろん戦況報告である。八月十六日。どうやらサン・プリヴァの戦い(la Bataille de Saint Privat)と呼ばれる激闘の一部のようである。

《今朝、九時頃、フレデリック・シャルル公の率いる軍団がわれらの右翼を激しく攻撃してきた。フォルトン将軍の騎馬隊およびフロッサール将軍率いる第二軍団がもちこたえた。ルゾンヴィルで左右に等間隔に配された部隊は効果的に応戦し夜になるまで頑張った。
 敵は戦力を誇示し繰り返し攻撃を加えたが頑強に押し返した。一日の終わりに、別の一隊がわが左翼を乗越えようとした。われわれは陣地を保持して敵に反撃を加えた。
 わが方の損害は甚大である。バタイユ将軍は負傷した。槍騎兵連隊が参謀部に突撃してきたのである。二十名の護衛兵が戦線を離脱し、中隊長は戦死した。
 夕刻八時、敵は全線において押し返された。一万二千の兵士が参戦したと算定される。》

戦況はフランス不利。この後すぐにメッツ(Metz)が包囲される。

まあ、戦争の話はともかく、普仏戦争と言えば、われらがアルチュール・ランボオはこのときどうしていたのか? 人文書院版『ランボオ全集』(一九五三年)の年譜によればこんな様子だった。一八七〇年一月、ランボオ十六歳、イザンバアルという教師がシャルルヴィル中学に赴任、ランボオが文学へ没入するきっかけをつくった。

《七月二十四日。イザンバアル、ドゥエ市にゐる三人の伯母ヂャンドル Gindre 一家に招かれ、友人ドヴェリエールと共に休暇をすごしにドゥエに行く。ランボオ、この出発を聞いて悲嘆にくれ、イザンバアル不在中のシャルルヴィルの生活の倦怠を思ひ、心秘かに家出の決心を固める。》

《八月二十九日。ランボオ、学校から授与された賞品を売り飛ばし、隣の駅モホン Mohon までの切符を買つてそのまゝ汽車でパリに行く。金が足らず無賃乗車のためにパリの駅で逮捕され、スパイの嫌疑をうけて一時マザス Mazas の牢に入れられる。
九月二日。セダン陥落。ナポレオン三世降伏。
九月四日。パリに革命勃発。共和制が宣布され、国防政府が設立された。
九月五日。ランボオ身許を明かし、同時にドゥエのイザンバアル宛に手紙。自分を助けてくれるやうに頼む。
九月六日。イザンバアル直ちにパリの警察に釈明の手紙を出し、同時に弁償の金を送る。
ーー数日後。戦争でパリとシャルルヴィルの間の交通が遮断されてゐたため、ランボオはドゥエのイザンバアルの許に送られる。》

とまあ、大変な目に遭っているわけだが、この後も一度イザンバアルとともにシャルルヴィルに戻りながら、またすぐに家出、最後は警察の手で母のもとに連れ戻されている。放浪癖は文学熱とともに始まったようである。
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by sumus_co | 2011-07-27 22:36 | 古書日録
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