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星を撒いた街手前が上林暁『星を撒いた街』(夏葉社、二〇一一年六月二五日、装幀=櫻井久)、そして引っぱり出してきた『晩春日記』(櫻井書店、一九四六年九月一〇日、装幀=青山二郎)。 久々に「文学」を読んだ、そんな感じがした。山本善行撰の収録七作では「晩春日記」がやはり一番作品としての完成度が高い。私小説というよりも谷崎潤一郎を読んでいるような気分になってきた。傑作といえよう。善行堂がイチオシの「花の精」もいい作品。男女ノ川が電車に乗り込んでくるくだりにさしかかって(ということは終わりの方だけど)、あ、これ昔読んだことがあるぞ、と思い出した。「晩春日記」「青春自画像」も多分読んでいる。ただし、おそらく二十年くらい前のことだ。 そのころ井伏鱒二とか木山捷平をよく読んでいたが(百円均一の全集端本や文庫本ばかり、ごろごろしていたように思う)、上林では「二閑人交游図」が好きだったなあ。将棋の話だし。本書のいくつかの作品にも将棋は随所に取り入れられて味わい深い効果をあげている。そういう文学的な記憶というのは、忘れてもまったく何の問題もないし、ふつごうもないが、予期せぬときに、ふとそれらが強く心を占めていることに気づく。「花の精」で月見草を引き抜かれてしまったとたんひどく動揺する作者の心境にも似ているかもしれない。『星を撒いた街』を読了してそんな文学の効用に思い至ったりした。文学の精がここに宿っている。 「諷詠詩人」も印象深い。一度だけ作者の家に訪ねて来た高台鏡一郎という詩人が通い詰めた「ドン」という焼鳥屋へ連れられて向かう途中に高台が死んだと聞くところから、高台の人間と作品を描き出して行く作品。高台は実在の詩人であり俳人だった高橋鏡太郎である。「ドン」となっているのは「ボルガ」。新宿西口で高島茂が経営していた焼鳥酒場。晩年の高橋は毎晩のように入り浸って酒をたかっており、自身俳人でもあった高島(「諷詠詩人」では高鳥)は最後まで高橋の面倒を見たという。 石川桂郎『俳人風狂列伝』(角川選書、一九九〇年再版)にも「蛸の脚」という標題で巻頭に高橋鏡太郎伝が描かれており、上記の実名同定はこの書物によるのだが、これはまた上林暁の描写とはひと味ちがったドライな高橋像で興味深い。 《昭和三十七年五月三日、その夜は珍しく少量の焼酎を飲み、彼は閉店を待たずにボルガをでていった。疲れて緑風荘へ帰りたかったのか、しかし気が変わって、彼がいつもギターを預けている信濃町から権田原寄りに出る屋台のおでん屋に立ち寄ると、ここでは酒を飲み、涼みがてらギターをかかえて国電の線路を見降ろす崖っぷちに寝ころんだ。そこはかなりの斜面なので、酔っている時にはけっしていくなと、常々高島茂が注意している場所だったが、気持がいいからよく寝るんだと彼は耳をかさなかった。 鏡太郎は、起ちあがろうとしたはずみにか、十五、六メートル下の崖下に転落し、翌朝四時、牛乳配達の青年に発見されて四谷三丁目の伴病院へ救急車で運ばれた。》 そして六月二十二日に四十九歳の生涯を閉じる。なお石川の本では転落が五月三日の夜から翌早朝にかけてとなっているが、五月が誤植で六月なのかもしれない(「西口界隈第二部 酒場『ボルガ』のこと」他)。『帖面』の高橋鏡太郎追悼号はたしか郷里の書庫にある。石川の本から鏡太郎の俳句を引いてみる。 踏みし土筆立ち直らんとするを見つ ピエタのごと擁かれむ日かも野茨咲く 唇をつく詩とどむべし梅雨の玻璃 モオツァルト青田のはての楽となる はまなすは棘やはらかし砂に匍ひ 「諷詠詩人」には高鳥と作者とのこんなやり取りがある。 「鏡さん蒐集癖がありましてねえ。ピストルもそうだし、瓶だってそうだし、パイプなんかも幾つも持っていました。金が入ると、直ぐそんなものを買っちゃうんです。アパートの部屋は、そんながらくたでいっぱいでした。」 「趣味人だったんだなア。」 「小鳥なんかも、何羽も飼っていました。椋鳥も飼っていたし、梟も飼っていたし、懸巣も飼っていたし……。」と主人は指折り数えた。 「鷽[ルビ=うそ]も飼っていたんじゃないですか。『心の傷手』という、鷽のムクロを歌った詩がありましたよ。」 「そう鷽も飼っていました。鏡さんは面白いんですよ。小鳥を飼っても、羽を抜いたり、脚を折ったりして、飛べないようにしてしまうんです。孤独で、さびしいから、鳥が飛び立てないようにして、自分のそばに置いときたいらしいんです。」 「それじゃア、死なしてしまうじゃないですか。」 「鷽のムクロも、多分そうして死なしたんでしょうねえ。」 「自分で死なしておいて、『小鳥のムクロを看るたびに泣けて来る、おまえさんはもう啼かないのかピィーイと尻上がりの澄んだ音色で』、なんて詩を作るんだから、勝手ですねえ。」 この身勝手さこそが文学の本質か……。 そうそう、文中、高台鏡一郎の詩「忍山温泉[ルビ=オシヤマファウンテン]のアラボラダ」が引用されていて《モーリス・ラヴェル『鏡』から、としてあるが、翻案かな》とある。これは一九〇四〜五年に作曲された組曲「Miroirs」で、その第四「Alborada del gracioso」に触発されたものだろう。 道化師の朝の歌 http://www.youtube.com/watch?v=FoaK0QtnDYw&feature=related * 東京堂書店で楽しみなトークが目白押し! ◉7月16日(土)「美術古書店店主の日々」 蝦名則さん×牧野伊三夫さん 今週のベストセラー(7月5日調べ)第一位! ◉7月22日(金)「今、佐藤泰志文学を語ろう」 出演:川本三郎氏(評論家) 岡崎武志氏(書評家) ◉8月6日(土) 石田千さん×浅生ハルミンさんトークショー 詳しくは東京堂書店最新情報 http://tokyodoshoten.co.jp/blog/?cat=3
by sumus_co
| 2011-07-06 21:27
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