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マラルメ伝

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ちょうど一年前の六月に買ったアンリ・モンドール『マラルメ伝』(GALLIMARD, 1941)をみみずが這うくらいのスピードで読んでいたのだが、ようやく一年かかって読み終わった。正確に言えば、すべての頁を捲った。ざっと八百頁なので捲り甲斐があった、ふう。

誕生から死までを時間軸で追いかけて書翰を中心にした引用と説明で構成しているのだが、こちらの語学力およびフランス文学に対する知識の低さもあってかなり読みにくかった。で、その後、柏倉康夫『マラルメの火曜会』(丸善、一九九六年)を読んだら、これがじつによく頭に入ってきて、モンドールの書いている内容がある程度補足できた。

マラルメは英語の教師として生涯を過した。一方でポーの飜訳や、自ら編集し記事もすべて書くような雑誌『最新流行』を発行したり、各種雑誌へ執筆(万博レポートみたいな記事も書いている)も続けていた。二十代で革新的な詩の創作に着手、その姿勢は終生変らなかった。一部のファン以外には理解されなかったが、ユイスマンスが『さかしまに』(À rebours、澁澤訳は『さかしま』)で、ヴェルレーヌが『呪われた詩人たち』(共に一八八四年)で取り上げることによって知名度が高まり始め、晩年にいたって世界的名声を得た。一八六四年二十二歳のとき、親友カザリス(Henri Cazalis)に宛てた手紙に自らが発明した《とても新しい詩》についてこう書いている。

《Peindre non la chose, mais l'effet qu'elle produit.》

物でなく、そのつくりだす印象をえがく。印象派の絵画からの影響と言われたりするようだが、必ずしもそうではなく、マラルメの内発的な音楽性・象徴性への強い欲求があったようだ。画家との交遊も広く、マネ、ドガ、ルノワール、ゴーギャン、ヴィヤール、ルドン、ベルト・モリゾなどと親しくしていた。パリのローマ街にあったアパルトマンに住むようになってからは毎週火曜日にマラルメを囲む「火曜会 Le Mardi soir」が持たれ、さまざまな文人や画家が姿を見せたという。常連はマルディスト(mardistes)と呼ばれた。晩年にはヴァレリー、ジッド、ピエール・ルイスら俊英が集まった。漱石の木曜会よりももう少し社交的な感じだったようだ。

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『マラルメの火曜会』よりローマ街の客間の暖炉の前のマラルメ。壁にはマネが描いたマラルメの肖像が掛っている。親友だったヴィリエ・ド・リラダンが「敗残者」扱いされているとマルディストの一人カミーユ・モークレールに告げられたときにマラルメが吐いた感想は傾聴に値する。

《でも、モークレール、敗残者……私たちはみなそうなのだよ。》《私たちは他にどうなり得るというのかね。なぜなら私たちは有限な自分を、無限のものに捧げようとしているのだから。理想にくらべれば、あまりに短い人生、あまりに弱い力を捧げようとしているのだが、定義からいって、理想とは本来到達不可能なものだ。だから私たちは必然的に、あらかじめ敗残者となるべく運命づけられているのだ。》(『マラルメの火曜会』より)

  *

昨日『日本古書通信』から引用しようと思って忘れていたのが、前野久美子さんの「大震災、原発事故から六十七日」。

《開業して丸十一年を迎えるひと月前だった。突然、足元がこんにゃくか豆腐になったかと思うほどの揺れ。本がバッタのように棚からびゅんびゅん飛び跳ねる。このままだと店が崩れると思い、道路向いの駐車場へ逃げて、二時間ほど立っていた。いや、揺れていた。》

《店は震災の三週間後の四月二日に再開した。自宅の復旧はまだで、お店で寝泊まりしながら仮オープンの形。ガスがなく電熱器でお湯を沸かして珈琲を煎れ、カレーを作った。こんなときに古本なんてどうなんだろうか。と恐る恐るの再開だったが、思いのほかたくさんのお客様にいらしていただき、「本が買えてうれしい」「珈琲が飲みたかった」と嬉しそうに言われた。》

そう、こんなときこそ古本です。自分のことで恐縮だが、神戸の震災直後の道端で瓦礫ゴミのなかから上林暁の『機部屋三昧』(地平社、一九四四年)を見つけ出したときはうれしかった。ゴミの上にのっていたわりにはいい状態だった。これは後に善行堂に譲ったと思う(むろんまだ古本屋になるずっと前のこと)。

book cafe 火星の庭
http://www.kaseinoniwa.com/

仙台に行って(文壇高円寺)
http://gyorai.blogspot.com/2011/06/yumbo-book-book-sendai.html
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by sumus_co | 2011-06-17 21:32 | 古書日録
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