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アントン・パーヴロヸッチ・チェーホフ著作集

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『アントン・パーヴロヸッチ・チェーホフ著作集第四卷』(中村白葉訳、三学書房、一九四四年二月一一日、装幀=青山二郎)。国会図書館で検索すると次のような全集版があるらしい。

・チエホフ全集一〜九 大正八〜十五 新潮社 秋庭俊彦、広津和郎、中村白葉
・チェホフ全集十 昭和三 新潮社 温浅芳(湯浅芳子)
・チェーホフ全集一〜十八 昭和九〜十一 金星堂 中村白葉
・チェーホフ著作集[六冊] 昭和十八〜十九 三学書房 中村白葉
・チェーホフ全集一〜十六 昭和三十五〜三十六 中央公論社 神西清、池田健太郎、原卓也
・同 再訂版 昭和五十〜五十二
・チェーホフ全集一〜十二 一九八七〜八八 筑摩書房 松下裕
・同 ちくま文庫 一九九三〜九四

三学書房版著作集は国会図書館に第四、七、九、十一、十二、十六巻と所蔵されており、webcat も同じなのでおそらく六冊だけしか刊行されなかったのだろう(?)。ただ中村白葉訳の開成館版も六冊(同じ巻数)が昭和十八年に出ていたことが分かった。「著作集」としてあるように金星堂版全集とは構成が違っているようだ。いずれにせよ戦時下の出版事情はよく分からない。

先日、チェーホフを読み直したいと書いた。そこで、とにかく手近の本をと思って、この著作集を取出したわけだけれど、実際に読んだのは岩波文庫版である。神西清訳『決闘・妻』(一九三八年四刷)、湯浅芳子『三姉妹』(一九七五年五〇刷)、『かもめ』(一九八〇年二九刷)。チェーホフが相当な人気作家だったというのは全集が次々出ていることでも想像できるのだが、昭和二年、岩波文庫の創刊ラインナップにも二冊入っている(米川正夫訳『桜の園』『伯父ワーニャ』)。

「決闘」はチェーホフではもっとも長篇だとのこと。デカダンな主人公とお人好しの医者と厳格な動物学者の取り合わせが妙ですらすら読めたが、それにしても久しぶりで読んだロシア文学、例によって登場人物の名前を覚えるのが一苦労だった。神西清はかなりの名訳者と思う。

《朝の八時といへば、士官や役人や避暑客連中が蒸暑かつた前夜の汗を落しに海にひと浸[つか]りして、やがてお茶か珈琲でも飲みに茶亭[パヴイリオン]へ寄る時刻である。イヴァン・アンドレーイチ・ライェフスキイといふ二十八ほどの、痩せぎすな淡色髪[ブロンド]の青年が、大蔵省の制帽をかぶりスリッパをひつかけて一浴びしに来てみると、もう浜には知合ひ連中が大分あつまつてゐた。そのなかに、日ごろから親しい軍医のサモイレンコもゐた。》

《この茶亭をサモイレンコはわが家同様に心得て、茶碗などもちやんと自用のが備へつけてある。毎朝彼に出る盆には、珈琲が一杯、背の高い切籠[キリコ]のコップにアイスウォーターが一杯、コニヤックが一杯ときまつてゐた。彼はまづコニヤックをぐつとやり、それから熱い珈琲を飲み、それからアイスウォーターを飲む。それが堪らなく旨いのであらう、そのあとではきまつてとろんとした眼つきになつて、両手で頬髭を撫で、ぢつと海に見入りながら言うのだつた。
「実に何ともいへぬ眺めだ。」》

「喫茶店の時代」のメモとして引用してみた。
by sumus_co | 2011-06-02 21:30 | 青山二郎の本
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