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火曜日 第106号

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『火曜日』第106号(火曜日の会、二〇一一年五月三一日)。神戸の詩人・安水稔和とそのお弟子さんたちの雑誌。旧友の村中秀雄さんが編輯をやっており、いつも送ってくれる。深謝。今号は「詩誌「蜘蛛」の時代」と題して安水氏と伊勢田史郎が原田の森ギャラリーで行なった対談(二〇一一年三月一九日)の記録。これはたいへん興味深い。備忘のため内容をかいつまんで紹介しておく。

一九六〇年、伊勢田と君本昌久が新開地でバッタリ出あった。中村隆を加えて三人で相談をした。君本は小林武雄を引き込もうとしたが実現しなかった。同年七月、新開地の喫茶店「リリック」で伊勢田、君本、中村、そして安水が集まって《神戸を中心とする詩と批評の雑誌を出そうという話をした》(安水)。八月、リリックで同人誌関係の人間を集めて相談をした。十三人参加。九月初め、丸本明子がやっていた元町の喫茶店「DON」で編集運営委員会を行ない九人が集まったが、結局、当初の四人だけでスタートすることになった。

誌名は《君本さんが蜘蛛はどうやって言って、たちまちそれにしよう、それでええやんと、異口同音にサンセイになって、「蜘蛛」に落ちついたということです》(伊勢田)。安保闘争の熱気の中から《何かを立ち上げなくてはいけないという思いで、四人が集まったんですね》(安水)。伊勢田は大阪ガス勤務三十一歳、安水は教員二十九歳、中村は金物屋三十三歳、君本は《文化サービス業》(安水)三十二歳。

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創刊号は一九六〇年一二月二〇日発行(表紙=津高和一)。五つの主張を載せた。
一、この時代の状況をいかに受けとめ、記録し、定着させていくべきかを詩人の課題としたい
二、神戸モダニズムの再検討
三、神戸詩史を記録する仕事
四、詩壇の中央化を清算して,神戸における総合雑誌のあり方を組み立てる
五、新しい人たちの実験の場として誌面を提供する

二号 一九六一年七月三日 網谷義郎
三号 一九六一年一一月二五日 貝原六一
四号 一九六二年七月一日 鴨居玲
五号 一九六三年二月二〇日 丸本耕
六号 一九六三年一〇月一五日 中西勝
七号 一九六四年六月二〇日 松本宏
八号 一九六五年六月一日

『蜘蛛』発行以外の事業として「七月の詩祭」二回、「蜘蛛の市」三回、「現代詩講演の夕」を主催した。また蜘蛛出版社を設立し、五年間で十六冊を刊行(『蜘蛛』休刊以後も蜘蛛出版社は君本が引き継ぎ主に自費出版の詩集を百冊以上出している)。

ベトナム戦争開始の年に終刊(休刊)。その理由は上記五項目に一応の成果を上げたと考えたため。しかし本当の原因は財政的な破綻であった。《君本さんが計算した数字があります。七冊の「蜘蛛」に要した印刷費は八十万。これは当時の金額で、今なら一桁上げたらいいですかね。収入は購読料が二十万。差し引き六十万が赤字。六十万の赤字のために「蜘蛛の市」を催した。それでも編集グループ四人による穴埋め作業は四十万を越えた。》(安水)

『蜘蛛』が休刊になった後『100年の詩集—兵庫神戸詩人の歩み』(日東館書店、一九六七年)、『今日の詩』(「蜘蛛」編集グループ、一九六八年)、『神戸の詩人たち』(神戸新聞出版センター、一九八四年)、『兵庫の詩人たち』(同前、一九八五年)というアンソロジーを君本、安水らが刊行した。

《言葉に何ができるかというと、何も出来ない。言葉は無力です。とは言え、というところから文学/詩は始まるんだと思います。言葉によってしか出来ないことがあるとそう思って書き続ける。中村さん君本さんも、伊勢田さんも私も、私たち若い四人は息咳[ママ]切って走りました。》(安水)

このまとめの言葉はちょっときれいすぎるような気がするが、それもまたよしとしよう。

  *

小生は『蜘蛛』について扉野氏が『sumus』12に「蜘蛛出版社ノート」を発表したときにその名を初めて知ったわけだが、なんと、その扉野良人がブログを始めた(!)。まだできたてホヤホヤながら、いかにも扉野氏らしい内容になりそうだ。

ぶろぐ・とふん
http://d.hatena.ne.jp/tobiranorabbit/
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by sumus_co | 2011-05-24 22:11 | 古書日録
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