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林蘊蓄斎の文画な日々
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pathography

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GILLES DELEUZE『LOGIQUE DU SENS』(LES EDITIONS DE MINUIT, 1977)。諸事情により一週間ほどブログを休みます。

  *

某氏より「これ読んでみて」と『日本病跡学雑誌』第六十五号(日本病跡学会、二〇〇三年六月二五日)を渡された。病跡学についてはほとんど意識はしていなかったが、ざっと目を通すと、なるほど文学研究でも病気(精神病、神経症)の観点から作品を論じるという流れができあがっているのだが、そういう分析手法が病跡学と呼ばれていて学会もあるというわけだ。目次だけ並べるとこんなかんじ。

夏目漱石の天才論  高橋正雄
寺山修司とマゾヒズム  野島直子
シェーンベルクの創造とトラウマ  福島章
臨床家としての宮沢賢治  杉林稔・神三矢
漱石文学における精神医学用語  高橋正雄
岡本かの子の病跡  高宜良・杉林稔
ジャコ・パストリアスの病跡  山下晃弘
芥川龍之介とヴェロナール中毒  立山萬里

「病跡学」(pathography)は近代精神医学が急速に発展した十九世紀に確立した。フランスの医師ルイ=フランソワ・ルリュの『ソクラテスのダイモン』(1836)が最初の著作とされる。ドイツの精神医学者パウル・メビウス(1853-1907)が「病跡学」という用語を新たに造り出し、チェザーレ・ロンブローゾ(1835-1909)の『天才と狂気』(1863)が世紀末の思想に大きな影響を与えたという。個人の生涯を疾病、とりわけ精神病理学的な観点から研究分析し、その活動における疾病の意義を明らかにしようとする学問である。

例えば本書掲載の「漱石文学における精神医学用語」は漱石全集の作品中に「気狂」「狂人」「精神病」「神経病」「神経衰弱」「不愉快」という六つの言葉がどのように使われているか数え上げて分布状態を調査したというもの。漱石の執筆時期を四つに分けて、その精神状態と言葉の使用頻度を直接結びつけているわけだが、是非はあるとしても執筆時期によって使用頻度に極端な偏りがあるという点には何か意味を見出したくなるのも分からないではない。

「夏目漱石の天才論」は、漱石はおそらくロンブローゾの影響から(?)メビウスと同時期に病跡学的天才論を発表していた、そしてそれは漱石自らが周囲から気違い扱いされていた体験を色濃く反映しているという主旨。

《「天才の多くは猛烈なる戦争を命のあらんほど持続してついに窮途に斃る」などの表現があって、漱石の描く天才は世間と敵対的な心理状態にあることがわかる。そして、これはとりもなおさず被害妄想患者の心理にほかならないわけで、ここに漱石的な天才と被害妄想患者の心理的類似性の起源を見ることもできる。》

《漱石は天才ゆえの不遇という方向のみを強調しているが、それと同時に、不遇なるがゆえの天才という逆方向のベクトルも考える必要があるのではないか?》

天才だからビョーキ? ビョーキだから天才? むろん凡人でもビョーキにはなるけど、たしかにアウトサイダー・アートというのは普通じゃない。ただし普通じゃないことイコール天才とも言えないし、そもそも天才論というのが少々時代がかってはいるように思う。

それはともかくとして、病跡学的な「古本愛好者論」というのも面白いかも(苦笑)。
by sumus_co | 2011-05-14 21:02 | 古書日録
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