林蘊蓄斎の文画な日々
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続・論語知らず

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Makino氏より収穫メールあり。

《都メッセで其中堂さんから買った「天文板論語」です。天文年間(1532—1555)に彫られた版木(清原宣賢名の跋は天文癸巳八月乙亥付け)が堺の南宗寺に残っていたのを用いて、大正5年に刷られたもの。大判で字様も堂々としています。綴じは五眼の康煕綴じです。このコピーには「第二百七十六号」と書き込んでありますが、300部くらい刷ったのでしょうか。》

東京都立中央図書館の蔵書解説では《大正5年南宗寺開山三百五十年忌を機会に刷られた一千部のうちの一点である。「刊行の趣旨」によれば、この事業終了後は大阪図書館に版木の保管を託することになっていたようだが、そのまま南宗寺に置かれ、戦禍によって失われたという。》とされている。

もう一件、データを頂戴していながら紹介しそびれていた朝鮮の諺文付きの『論語諺解』もアップしておこう。小生は韓国の出版物には昏いので初めて見た。

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《「論語知らずhttp://sumus.exblog.jp/14696824」で朝鮮本『論語集註大全』の書影が紹介されていますが、もうひとつ朝鮮本『論語諺解』を紹介します。寸法は22センチ×33センチという悠々たる大本。綴じ穴が5つあるのは朝鮮刊本の特徴だそうです。日本の本も中国の本も綴じ穴は4つ。ただし、日本のは等間隔ですが、中国のは中央の間隔が寄っているのが多いようです。

本文ですが、漢字のあいだにハングルがあるのは、日本の漢文のような送り仮名ではなく、漢字音の注記です。たとえば、第一文はハングルをローマ字化すると、

子ca曰oal[i]學hak而i時si習sip之ci[myeon]不peul亦yeok説yeol乎ho[a]

というところでしょうか。次は一字さげて、朝鮮語の訳文がついて、これでワンセット。注はありません。漢文の訓読法は日本独特で、朝鮮でも琉球でも漢文は直読したらしい。残念ながら、刊記のある巻は見ていませんが、見る人が見れば、活字の字様からおよその刊行年代は知れるはずです。》

なるほど、なかなかいい本だ。付け焼き刃であちらこちら検索してみると、

訓民正音創製以後の韓国語
http://www.kampoo.com/korean/korean_history/hangeul_history.htm

というサイトに《1590年:儒教の経典である四書三經をハングルで翻訳した「七書諺解」が出版される》(「諺解」すなわちMakino氏が説明してくださっているようなハングル読みの併記を指す)とあるので、この『論語諺解』もそれ以降そう遠くない時期の刊本であろうか、もっと新しい感じではあるが(?)

ちなみに「直読」ということについては韓国にも返り点に似た読点があるようだ。

朝鮮語広場 > 釈読口訣の読法
http://porocise.sakura.ne.jp/korean/gugiel_reading.html

ところで、周知のことながら、ハングルの始まりは世宗大王が民衆にやさしい文字を普及させるという目的で十五世紀前半に創製させた「訓民正音」である。画期的な発明ではあったが、当時の漢字エリート層には総スカンを喰った。例えば宮廷学者の崔萬里(チオエマルリ)が上奏した反対意見のなかにこういうくだりがある。

《中国の影響下にある諸国では、民族の特性や日常語が異なっているというだけで、漢文とはちがった文字を創ったことはありません。蒙古や日本、そしてチベットに固有文字があるといいますが、かれらはみな野蛮人として蔑視されております。こうしたなかで、わが国の美徳を捨てるということは、われわれの文化を退歩させるものでありましょう。》(金両基『ハングルの世界』中公新書より)

野蛮人ですか、倭冦の徒ですからな。ま、こういった旧守派はどこにでもいる。日本でもローマ字論やカナモジ運動が盛んになりそうになると同じような反対意見が出ているような気がするし。ちなみに「訓民正音(フンミンジウオンウム)」が「ハングル」と呼ばれるようになったのは二十世紀の初めごろから。それまでは諺文(ウオンムン)などとやや蔑まれて呼ばれることが多かった。ところが野蛮国日本によって植民地化が進む状況下において国文意識が著しく高まったのだという。固有の言語および文字を死守しようとした人々の一人、傑出した言語学者・周時経(ジウシキヨオン)が「ハングル」と命名したとされている。よって「ハングル」に当てる漢字はないそうだ。
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by sumus_co | 2011-05-10 20:58 | 古書日録
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