『平凡パンチ』(平凡出版、一九六九年一一月一〇日号、表紙画=大橋歩、表紙構成=長友啓典/小西啓介)。ニューヨーク総力特集。小林泰彦の「絵本ニューヨーク通信」、グラビアは加納典明。「われらニューヨーク人」(撮影=間瀬明)ではセントラル・パークのブッシュマン・ゴリラ・シアター、フィルモアの楽屋、ブラック・パンサーの事務所、リンゼイ市長の事務所、雑誌『アバンギャルド』編集部、イースト・ヴィレッジのモーターサイクル・アウトロー「ノマズ」、ウォルター・トンプソン広告会社、ブロードウェイの「ヘアー」、アポロ劇場のブラック・パワー、そして街頭のファッション・チェック写真がおよそ六十カット。「ニューヨークの5つの街」の簡単な紹介(グリニッチ・ビレジ、イースト・ビレッジ、タイムズ・スクエアとブロードウエー、ミッド・タウンイースト、ハーレム)、買物、食、プレイ・スポット、ホテルなど実用ガイドも。
「ニューヨークで頑張ってる日本人」にはいろいろな職業の人が十一人取材されている。カメラマンの坂田栄一郎はこのときアベドンの助手をしていたようだ。他にはデザイナーの久保啓。「チキ・テリ」という日本食堂で当てた野間口洋二(http://www.pressnet.tv/release/9320)などの名前がある。それ以外の人たちは検索しても消息は不明。で、一番ビッグなのがミス・クサマヤヨイ「ニューヨークのド真ン中でSEXを演出する日本女性」という見出しで四頁の記事になっている。
今や巨匠の域にいる草間弥生なのだが、この記事を信じるなら、そうとうに危なっかしい橋をわたってきたようだ。
《彼女は乱交パーティも主催する。メンバーは二十五ドルの会費を払って参加しロックンロールのひびく暗い部屋で酒を飲みマリワナを吸い全員がボデー・ペインティングをする。ここでは当然セックスも行なわれる。
あるパーティには、アレン・ギンズバーグや詩人で哲学者のアッベ・ホフマンもやってきて、
「KUSAMA をやってしまえ!」
と、けしかけたが、彼女は逃げてしまったという。》
アッベ(誤植?)・ホフマン(Abbot Howard "Abbie" Hoffman)は社会活動家。以前、モージョー・ウエストのチラシを紹介したときに名前が出た。
MOJO WEST 1.9
http://sumus.exblog.jp/11161968/ニューヨーク以外では一九六九年十月二十一日の国際反戦デー関連の記事が目立つ。ただし前年の混乱を警戒した当局は二万五千人の機動隊と五千人の私服警官を配備して徹底的な封じ込めを計った。野坂昭如や三島由紀夫が現場を見学に出かけているが、学生完敗の様子である。そのような時代、小生は田舎町の中学であった。この広告にいちばんジーンときた。忘れられないの……。