林蘊蓄斎の文画な日々
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DIAGHILEV

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John Percival『THE WORLD OF DIAGHILEV』(Studio Vista, 1971)、写真文庫というか、今なら「とんぼの本」とか「らんぷの本」シリーズに相当するような目で見る「PICTUREBACKS」の一冊。ディアギレフという名前はよく耳にし目にするが、いったいどういう人物なのか、これまでさほど興味を起こさなかったので、ざっと読んでみて教えられることが多かった。表紙はラリオノフ筆のカリカチュア。左からラリオノフ、プロコフィエフ、ディアギレフ。

序文に著者がちょっとした体験談を書いている。ある早朝、ロンドンのコヴェントガーデンの外でバレーのチケットを買うため行列に並んだ男が「あんた、ダッギレヴを見たことがあるかい?」と尋ねた。すると「史上最高のダンサーだったよ」という答えが返ってきた……そうだ。

もちろんディアギレフはダンサーではない。いってみれば興行師である。ペルブルグ大学の法科学生となったときにアレクサンドル・ブノワらの芸術サークルに接近して以降、初めはリムスキー・コルサコフについて作曲に取り組んだり、絵を描いたりと作家志望だったのだが、たちまち自分に才能がないことを悟ったらしい。そして熱心だった絵画蒐集から「マエケナス(Maecenas、文化芸術の保護者、メセナの語源)」になるという道を見出した。

手始めとしてイギリスや北欧の画家たち、あるいはフランス印象派を紹介するなど絵画展覧会を組織してロシアを巡回させることから始めた。豪華な美術雑誌も出版した。ロシア画家の展覧会をパリで開いたのが一九〇六年。翌年にはロシア音楽の演奏会、そして〇八年にはシャリアピン主演の歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」を成功させ、シャリアピンの名前を西欧に知らしめた。そして〇九年五月十九日(シャトレ座)と六月二日(同)、六月十九日(オペラ座)、ロシアの有力ダンサーたちをかきあつめて公演した「セゾン・リュス」はパリの観客たちに新鮮な驚きを与えた。

五月十九日の演目のひとつ「Le Pavillon d'Armide(アルミードの館)」で召使い役を演じるニジンスキ。その飛翔するようなジャンプは観客の度肝を抜いたという。
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同じくアルミダ役のアンナ・パヴロヴァ。彼女は一九二二年九月に来日公演を行なっている。
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そして一九一六年「キキモラ」でキキモラに扮するブロニスラバ・ニジンスカ(ニジンスキの妹)。コスチュームはミハイル・ラリオノフである。表現主義を先取りした感じのメイクだ。
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ディアギレフは一九一一年に独自のバレー団を組織し一九二九年に歿するまで公演を続けた。彼が起用したダンサー、振付家、作曲家、美術家などは今では信じられないような顔ぶれである。画家にかぎればピカソ、ドラン、マチス、デ・キリコ、エルンスト、ローランサン、ルオー、ペヴスナーらの舞台美術が見られた。自ら音楽や絵画の素養があるためいろいろな面でリハーサルにも口出しをしていたようだが、晩年は古書蒐集に興味が移ったこともあってあまり稽古場に姿を見せなくなったという。二九年、ヴィシィでの夏の公演を終えた後、八月十九日、ヴェネチアで休暇中に死去しその地に葬られた。

昨日届いた『風船舎古書目録第五号』(二〇一一年五月)をめくっていると『牧神の午後 マラルメ・ドビュッシー・ニジンスキー』(平凡社、一九九四年)という本が出ていた。ちょっと高いので手は出せないが、表紙のニジンスキの舞台写真に魅かれて、少し前に買ったこのピクチャーバックを紹介してみたというわけである。
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by sumus_co | 2011-04-21 22:16 | 古書日録
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