東京都庭園美術館で開催されたポスター展のカタログ『二〇世紀のポスター[タイポグラフィ]』(日本経済新聞社、二〇一一年)を頂戴した。多摩美術大学、株式会社竹尾のコレクションを中心にしてタイポグラフィとポスターの関係に焦点を当てた。
植草甚一はこう書いている。
《本のばあいは、どんなに装幀がすぐれていても、その内容のほうが拒絶反応を起こさせるが、レコードのばあいは、とくにジャズやロックがそうだが、どんな音楽だか見当がつかないのに、アルバム・デザインのいいのにブツかると、つよい好奇心を起こさせることが多いのである。》
《オーネット・コールマンの「フリー・ジャズ」が、そのころはすくなかった二つ折りのジャケットで、ジャクソン・ポロックの絵が四角に切り取った表紙の窓から透けて見えるああり、こいつは最高だなと感心したものである。》
《ミュージシャン個人でいうと、モンクのに面白いデザインが多い。それで思いだすのは、あるとき杉浦康平さんとテレビでアルバム・デザインの対談をやったことがあった。そのとき彼がとても気にいってしまったのが「ムーヴィング・アロング」なのであって、紫色をつかったあたりいいですよ、といったことが忘れられない。》
《デザインがよければジャズも聴きごたえがあるというのは、間違った考えかたではないのだ。それなのにデザインがいいと買ってしまう癖があるぼくは、からかわれてばかりいた。》(「デザインがよければ、なかのジャズもいい」、初出『美術手帖』一九七一年二月)
ちなみにコールマンの「
FREE JAZZ」は一九六一年。杉浦康平が感心した「
MOVING ALONG」はウェス・モンゴメリーのアルバム(一九六〇年一二月録音)。
ということで白いポスターはニクラウス・トロクスラーによるMJQの公演告知。ヴィリザウ・ジャズ・フェスティバル、一九九二年、スイス。じつにすっきりとして見事という他ない。
赤い方は一九三六年ニューバーリントン(イギリス)で行なわれたシュルレアリスム国際展のポスターでマックス・エルンストの作品。凸版二色でここまでの効果はこれまた驚きである。