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アンリ・ミショオ詩集

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『アンリ・ミショオ詩集』(小海永二訳、書肆ユリイカ、一九五八年一月一五日)。一乗寺の帰り道に善行堂にて。ミショーの生立ちなども割合と精しく解説されている。先月、街の草で求めた『プレヴェール詩集』と同じシリーズ。四角い判型、この形はたぶんフランスの詩集に触発されたのではないかと推測しているが、証拠物件はまだ入手せず。いずれ。

少し前にミショーのカタログと同時に紹介した『passages』、そこに『徒然草』第八十二段の引用があると書いた。それはこういう文章。

 Koyu, le religieux, dit : seule une personne de compréhension réduite désire arrager les choses en séries complètes.
 C'est l'incomplétude qui est désirable. En tout, mauvaise est la régularité.
 Dans les palais d'autrefois, on laissait toujours un bâtiment inachevé, obligatoirement.
 (Tsuredzure Gusa, par YOSHIDA NO KANEYOSHI, XIVᵉ siecle.)

これを『新訂徒然草』(西尾実・安良岡康作校注、岩波文庫、一九九一年八五刷、底本は烏丸光広本)で見ると。

《弘融(こうゆう)僧都が、「物を必ず一具に調(とゝの)へんとするは、つたなき者のする事なり。不具なるこそよけれ」と言ひしも、いみじく覚えしなり。
 「すべて、何も皆、事のとゝのほりたるは、あしき事なり。し残したるをさて打ち置きたるは、面白く、生き延ぶるわざなり。内裏造らるゝにも、必ず、作り果てぬ所を残す事なり」と、或人申し侍(はんべ)りしなり。》

もう一例『徒然草』(川瀬一馬校注、講談社文庫、一九八二年三二刷、底本は慶長初年刊の古活字本)を引いてみる。

《弘融僧都は、「ものを必ず一具にととのへんとするは、つたなき者のすることなり、不具なるこそよけれ。」と言ひしも、いみじくおぼえしなり。
 すべてなにもみな、ことのととのほりたるは、あしきことなり。し残したるを、さてうちおきたるは、おもしろく、いきのぶるわざなり。「内裏造らるるにも、かならず作りはてぬところを残すことなり」と、ある人申しき。》

慶長初年は一五九六。烏丸光広(からすまる・みつひろ、一五七九〜一六三八)と同時代ながらテクストの細かいところはかなり異なっている。ま、それはいいとして、仏訳はやや問題ありだろう。省略が多過ぎる(ただしミショーが部分的に引用したのであれば話は別だが)。

英訳を探してみると『THE MISCELLANY OF A JAPANESE PRIEST』(Transration by WILLIAM N. PORTER, HUMPHREY MILFORD, 1914)の pdf. が公開されていた。該当部分。

《Koyu says, ‘Things which are made all exactly the same are doubtless the work of those who have but little taste ; ’tis[ママ] better to have dissimilarity‘ ; and he is certainly right.
 Generally speaking, uniformity in anything at all is bad ; it is better to leave a little imperfection, and thereby your life(being more natural)will be prolonged. There are some who say that when a palace is being built, you should never fail to leave one little piece of it uncompleted.》

ひとつだけ。「ととのほりたる」をフランス語では「la régularité」、英語では「uniformity」としている。どちらも整っている、均斉という意味のようであるが、上記二冊の文庫本における現代語訳は前者が「物事の完全に出来上っているのは」となっており、後者も「物事が完全であるのは」である。「完全」で訳がそろっているのは意外だった。いつも思う事だが飜訳というのはほんとうに難しい。

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『アンリ・ミショオ詩集』にはこんなチラシが挟んであった。得した気分!
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by sumus_co | 2011-03-28 21:40 | 古書日録
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