林蘊蓄斎の文画な日々
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魔女の鉄鎚つづき

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インキュナビュラ(incunabula)とは『出版事典』にはこうある。

《ドイツのグーテンベルクによる西洋の活字印刷術の発明(1450年ころ)以後1500年までの、いわゆる印刷術の揺籃期(ラテン語 incunabula は揺籃の意)にヨーロッパで行なわれた活版印刷、さらにそれによってつくられた図書をいう。また初期整版本を含めて同期印刷本を総称することもある。》

天理図書館で開催された「グーテンベルクの世紀」展図録(一九八九年)にはこうある。

《西洋で15世紀に印刷・刊行された書物は、「インキュナビュラ」と呼ばれる。ラテン語で「むつき、おしめ」の意味、つまり、印刷術が生まれたばかりの頃の書物ということである。》

「ゆりかご」なのか「おしめ」なのか? 

C.T.LEWIS『Elementary Latin Dictionary』(Oxford University Press, 1997)にはこうある。引用では長音の記号は省いたが疑似発音は「インキューナーブラ」、「インキューナーブロールム」か。

in-cunabula, orum, n., a cradle : puerorum :
Bacchi, O. : ab incunabulis imbutus odio, i.e. from
childhood, L.ーA birthplace : nostra, Enn, ap. C. :
deorum : Iovis, O.—Fig., the elements, beginnings :
oratoris : doctrinae.

ゆりかご、出生地、はじまり……といった意味らしい。他にネット上で見つけたアメリカのノートルダム大学HPのラテン語辞書によれば

incunabula -orum n. pl. [swaddling-clothes]; hence [infancy; birthplace]; in gen. , [source, origin].

むつき、産着、幼年期、出生地、起源などの意味。ゆりかごは出ていない。もっと詳しい辞書などに当ればはっきりするかもしれないが、目下はこのくらいで(ご教示歓迎)。《初期刊本》という単語はたまたま架蔵していたクリスティーズの売立カタログ(27 NOV. 1991)の表紙に「Early Printed Books」とあるように、その訳語であろうか。ただし「初期刊本」イコール「インキュナブラ」ではないようだ。というのはこのカタログには1501年以降に刊行された書物も掲載されているから。

同カタログ掲載のアルドゥス(Aldus Manutius)版のアリストテレス『Opera』の一葉。一四九五〜九八年にかけて五部四巻で刊行されているそうだ。十五世紀におけるギリシャ文字での出版物として最も知られた試みであり、アルドゥスの最初の大きな出版物だった(同カタログ解説より)。

ヴェラム装がどんなものかというとこんな本である。
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本日、古本マルシェで買った『創業100周年記念天牛書店洋古書目録』(二〇〇七年一〇月二五日)、そこに載っていたトマス・アクィナス『対異教徒大全 Summa Contra Gentiles』(Lugduni, Ad Salamandrae, in vico Mercatrio, 1567)。

もう一点、『魔女の鉄鎚』のオコンネル・コレクションにはこんな本もあったそうだ。

《これほど神経質になったところを見るのは、十五年以上前、ボストン郊外でのがらくた市で、植民地時代の印刷の最も早い例とされる、貴重な珍本『ボストン湾祈祷文』を発見した時だ。》

ボストンに最初の教会が建てられたのは一六三二年。そこの「teaching elder」だったジョン・コットン(John Cotton)が一六四八年に『The Way of Congregational Churches』を出版した。コットンは一六四〇年にソング・ブックを刊行しており、それが北アメリカでの最初の出版物だとされているらしい(First Church Boston)。珍本『ボストン湾祈祷文』がどんなものかすぐには分からないのだが、この時期の出版物ということだろうか。
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by sumus_co | 2011-03-26 20:29 | 古書日録
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