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魔女の鉄鎚

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本のコレクターが登場するミステリーだからとある人がすすめてくれた。ジェーン・S・ヒッチコック『魔女の鉄鎚』(浅羽莢子訳、角川文庫、一九九七年)。ざっと読んだ。『Malleus Maleficarum』(Latin for "Hammer of the Wicked")という一四八六年に書かれ八七年にドイツで出版された魔女についての書物を信奉する秘密結社(ようするにウルトラ・アンチ・フェミニズム集団)がゲーリングの隠し口座の暗号を記した一冊の魔法書を追い求める。偶然それを手にした愛書家の医師オコンネルが殺され、その娘ビアトリスがその魔法書の謎を解いて行く。オカルト、エロ、グロ、スリルまである盛りだくさんな内容。

で、その巻頭にコレクションのハイライトとして挙げられてる三冊の書物の説明がこれ。

《オコンネルの蔵書が形成されるうえで最も役立ったのは、ジュゼッペ・アントネッリなる有名なイタリア人古書商で、永年の間に、群を抜く宝を数点売ってくれていたが、その中にはデル・ケリコ彩色の『時祷書』、プリニウスの『博物誌』のニクラウス・ジェンスン版仔牛皮紙初期刊本(一五〇一年以前の印刷本)、それに一八〇四年に名印刷工ジャンバティスタ・ボドニが出版した挿絵入り『神曲』全巻揃いも含まれていた。》

デル・ケリコは画家なのか、思い当たらなかったところ、読者の方よりご教示を賜った。メディチ家の『時祷書』を装飾している
FRANCESCO D'ANTONIO DEL CHERICO のようである。下記 pdf の p23 を参照。
http://www.omifacsimiles.com/cats/hours_i.pdf

検索するといろいろヒットした。そのいくつかを。

d'Antonio del Chierico (or Cherico) Francesco[wikigallery]
http://www.wikigallery.org/wiki/artist51923/d'Antonio-del-Chierico-(or-Cherico)-Francesco/page-1

Prayer Book of Lorenzo de' Medici
http://www.1st-art-gallery.com/D'antonio-Del-Chierico-(or-Cherico)-Francesco/Prayer-Book-Of-Lorenzo-De'-Medici.html

『時祷書』horae, Book of hours, livre d'heures については下記など参照。
http://en.wikipedia.org/wiki/Book_of_hours

ジェンスン版プリニウスの『博物誌』は一四七六年に刊行されている。《仔牛皮紙》は普通はヴェラム(vellum)という。《初期刊本》はインキュナビュラ(incunabula)あるいはインキュナブラである。

上の図は多くのインキュナビュラを所蔵する天理図書館の『天理秘蔵名品展』図録(天理道友社、一九九二年)に掲載されているプルタルコス『対比列伝』(ヴェネチア、一四七八年、ジェンソン)。ジャンソンあるいはジェンソン(Nicolas Jenson, 1420-1480)はフランス生れの活字製作者であり、印刷工、出版人でヴェネチアで活動した。最初の「ローマン体」を作り出したのがジェンソンである。ガラモンドやアルドゥスに影響を与えた。

ボドニの『神曲』も実在の書。検索してみると初版は一七九五年に出ているようだ。

活字書体の源流をたどる
http://www.joshibi.ac.jp/jam/katuji10_03.pdf
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by sumus_co | 2011-03-25 22:06 | 古書日録
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