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林蘊蓄斎の文画な日々
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私の文学漂流

私の文学漂流_b0081843_2047494.jpg

吉村昭『私の文学漂流』(新潮文庫、一九九五年四月一日、デザイン=新潮社装幀室、カバー装画=大崎吉之)。

吉村昭の小説にはほとんどなじみがない。『喫茶店の時代』の資料として読んだこの『私の文学漂流』でのみ吉村昭を評価していた(している)。よく考えてみると『歴史の影絵』(中公文庫、一九八四年)も読んでいたことを、つい先日、文春文庫版『歴史の影絵』(二〇〇三年)を読了してから気づいた。なんたる耄碌(読了する前に気づけよ)。こちらも小説の背景として吉村が興味をもったさまざまな事象が取材メモのような形でまとめられており、小説以上の面白さだ(といっても小説は読んでいないのだが)。

『喫茶店の時代』では吉村が属していた丹羽文雄を中心とする早稲田系の同人雑誌『文学者』の会合がもたれる東中野の「モナミ」に関する記述(『私の文学漂流』)を使わせてもらった(ちなみに吉村は学習院中退)。今見直すと、それ以外にも興味ある出版社がいろいろと登場している。参考までにいくつか挙げておく。

雪華社

《その頃[昭和三十三年]、私は、京橋にある雪華社という出版社に行き、岩本常雄氏に会った。
「早稲田文学」が丹羽文雄、石川達三、火野葦平三氏の責任編集により復刊され、出版を雪華社が、編集長を元「改造文芸」の編集であった岩本氏が引受けていた。》九二頁

次元社

《[昭和三十四年]石川利光氏が次元社という出版社を興し、妻[津村節子]に書下ろし長篇小説を書くようすすめ、『華燭』と題する小説が、次元社の最初の単行本として出版されたのである。
 それはいくつかの書評にとりあげられ、四月に入ると再版され、出版記念会がもよおされた。丹羽文雄氏をはじめ石川利光氏、八木義徳氏などが出席したが、佐多稲子氏、吉行淳之介氏も来会して下さった。》一〇八頁
《石川氏は、スピーチで、
「現在は女流作家は少ないが、これからは女性の作家が続出するようになる」
 と、予言めいたことを口にし、妻の小説の出版につづいて無名の女流作家の単行本をぞくぞくと出版する予定だ、と言ったりしていた。》一〇九頁

ちなみに次元社を国会図書館で検索するとこんな結果だった。

 華燭 / 津村節子. -- 次元社, 1959
 明日は知らない / 柏木瞳子. -- 次元社, 1959 
 接客読本 / 秋田貞男. -- 次元社, 1959 
 背をむける女 / 吉井徹郎. -- 次元社, 1959 
 育児読本 / 中野博光[他]. -- 次元社, 1960

芸術生活社

《[昭和三十六年]気温が低下した頃、「芸術生活」の古山高麗雄という編集者から電話があった。お頼みしたいことがあるので、来社して欲しいという。
 私は承諾し、御徒町駅に近い建物の二階にある「芸術生活」の編集室に行った。
 古山氏は、眼も言葉づかいも温かい感じのする方で、河出書房の編集者時代、佐藤春夫氏の担当で、現在も親しくさせていただいている、と言った。
「佐藤さんが、吉村さんのことをひどく買っていましてね。才能のある新人だ、と言うので、私も、できるだけのことはしましょう、と申し上げたんですよ」
 氏は、そう言うと、
「匿名で結構ですから、連載随筆を書いて下さいませんか。お小遣いかせぎにはなりますでしょう」
 と、言った。
 金に窮していた私は、氏の言葉に深い感謝の念をいだいた。》一四二頁

《[昭和三十八年]相変わらず「芸術生活」の古山高麗雄氏は、私に執筆機会をあたえてくれていて、その雑誌の四月号に七十枚の『非情の系譜』という小説を掲載して下さった。編集室が兄の会社に比較的近かったので、昼の休憩時間に古山氏に会いに行くのが常であった。》一五一頁

南北社

《[昭和三十八年]二月下旬の日曜日、かなりの降雪があって、積った雪をふんで二人の男が家を訪れてきた。南北社という出版社を経営している大竹延氏と、その編集の相談役になっている評論家の尾崎秀樹氏であった。
 尾崎氏は「文芸日本」という同人雑誌に所属し、家が近くであることもあって顔なじみであった。
 南北社では、新進の作家や評論家の単行本を新鋭創作叢書として出版していたが、大竹氏は、「文學界」の同人雑誌評を担当している評論家の林富士馬氏の推挙があったので、私の作品集を出したい、という。》一四九〜一五〇頁

日本工房

《[昭和四十年]日本工房という会社から発行されている「プロモート」の編集人山下三郎氏の依頼で、十四枚の『或る夫婦の話』という短編小説を書き、それが同誌の十月号に掲載された。その会社は、主として三菱重工業のPR関係の仕事をしていて、社長はフランス文学者内藤濯(ないとうあろう)氏の子息の初穂氏で、元海軍技術士官であった。「プロモート」では無名の作家の掌篇小説を毎号掲載しているのである。
 私は、神田司町のビル内にある日本工房に行き、山下氏や内藤氏と話をし合うようになった。》一八三〜一八四頁

ということで「プロモート」に連載した「戦艦『武蔵』取材日記」が吉村の出世作『戦艦武蔵』(『新潮』掲載)につながるのである。ここに出てくる山下三郎はEDI叢書の山下三郎か?(手許にないので参照できない)。『新潮』からアプローチがあった。

《編集長の斎藤十一氏が、「プロモート」に連載をはじめた「戦艦『武蔵』取材日記」を読み、私に、戦艦「武蔵」をどのように小説に書くのかきいてくるように言ったという。》一九二頁

さすが斎藤十一の目に狂いはなかった。
by sumus_co | 2011-03-21 21:57 | 古書日録
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