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海峡

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大江満雄『海峡』(昭森社、一九五四年一一月一日、装幀=北園克衛)。表紙とカバー。著者署名あり。トリペルでダンデライオンの棚から。大江については下記参照。

今週の詩と詩人 大江満雄
http://pippo-t.jp/newpage137.html

   崩壊

 すべてが崩壊している
 私の肉体も 彼の肉体も。

 金の機械も
 制度も。
 
 私たちは どのような時間を
 もっているだろう。

 おたがいの
 顔や手足は一刻一刻 くずれてゆく。

 いかなる医師も 時がくずしてゆく顔を治すことはできない
 私の心は完全な肉体を描いているが 崩壊してゆく。

 あの森の中で 恋人といっしょに歩いた音楽的な時も
 あの海辺で まっぱだかになって青い空に手を伸ばした彫刻的な時も。

 
 この不完全者の嘆きを たれがなぐさめよう
 人間の慰戯 ねぶかい自愛性。

 だから 私は 烈しく燃えながら 何ものかと衝突し
 その摩擦の中から 新しく生れかわりたい。

[途中二行空きは原文のママ]

   *

『日本古書通信』980号。アンケート「昨年の収穫」(上)をまず読む。値段が付記されているのが古通ならではか。池谷伊佐夫さんの収穫には感嘆。淡島寒月『梵雲庵雑話』(書物展望社、一九三三年)とリンド・ウォード『VERTIGO』(ランダムハウス、一九三七年)……さすがだ。小沢信男さんがあげておられるカミの『名探偵オルメス』(三谷正太訳、大白書房、一九四二年)も気になる稀本(オリジナルの Cami Pierre『Les aventures de Loufock - Holmès』Flammarion 1926、もけっこうなお値段だ)。菅野俊之さんもこのブログで紹介した泉鏡花本などを挙げておられる。グレゴリ青山さん、らしいです。

岡崎氏の連載「古本さんぽ」は第五回「憧れの一ノ関「ベイシー」へ」。「火星の庭」「虔十書店」とともにルポされている。一ノ関あたりもけっこう被害があったようだが、大丈夫だろうか。

曾根博義「犬も歩けば 近代文学資料探索(15)」は衣巻省三「けしかけられた男」。この実験小説に北園克衛が登場しているという。

《モデルも問題になったようだが、すぐにわかるのは、自分が芸術的に脱皮するたびに「北地克己」「悪坂友衛」「小松理一郎」というように名を改めるという「北地」こと北園克衛だ。『円錐詩集』とか、純日本的になった彼の最近の詩の是非も論じられる。北園克衛は早くから衣巻省三と親しく、一時馬込に住んだこともあるらしい。》

「けしかけられた男」は昭和十年の第一回芥川賞の候補になったにもかかわらず単行本は出ていない(初出は『翰林』一九三四〜三五年)。このときの受賞作は石川達三「蒼氓」、他の候補作は太宰治「逆行」、外村繁「草筏」、高見順「故旧忘れ得べき」。
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by sumus_co | 2011-03-16 21:24 | 古書日録
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