『良寛遺墨集』(根津美術館、一九六〇年五月一五日、題簽=安田靫彦)。印刷はあまり良くないが、良寛の文字をはじめてじっくり眺めたのはこの集によって。じつは一九九五年の一月に某書店の目録で注文したもの。注文葉書を投函後しばらくして神戸の震災の直撃を受けた。いきなりのアポカリプス・ナウ。
記憶では地震発生からおよそ半月ほど経ったある日、家の片付けをしながら傾いて今にも倒れそうな石の門柱に取付けた郵便箱をのぞいた。大きな封筒が入っていた。開けてみると、注文したことすら頭からすっ飛んでいたが、この一冊が入っていたのである。記念すべき地震後古本第一号だった(ただしそれ以前に路上で拾った本がある)。