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ペンギン・ブックス

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J.E.モーパーゴ『ペンギン・ブックス 文庫の帝王A・レイン』(行方昭夫訳、中公文庫、一九八九年五月一〇日)。ペンギン・ブックの生みの親アレン・レインの伝記である。この本によれば、ペンギンのシリーズが創刊されるときに《もし新しいシリーズを親しみのこもったものにしようとするならば、簡素な装幀にし、大胆な明るい色彩を用い、活字も鮮明で気取らぬものにするべきだ、とアレンは本能的にさとった》そうだ。

そして名称もまたその体裁に見合うよいものでなければならず、一般大衆の耳に親しみの響きをもった名にする必要があったという。

《「ワールド古典叢書」のようにいかめしくても、エヴリマンのように一般人を見下すようでもいけない。また視覚に訴える絵で表せる名であって欲しいし、一目でそれとわかる、しかも、楽しい奥付として白黒で容易に印刷できるものでなければならない》

まずイルカを考えたが、これはすでに使われていた。つぎにポーボス(ねずみいるか)にしようとしたらファイバー・フェイバー社があるシリーズに使用していた。そしてペンギンに決まったわけだが、誰が提案したのかは分かっていない(関係者はみんな自分だと主張しているそうだ)。《確かなのは、一度ペンギンと決定してしまうと、みな一番最初からそれに決めていたような感じがしたということである》。

《エドワード・ヤングという、ボードリ・ヘッド社の下級社員であった二十一歳のアマチュア画家がすぐロンドン動物園にペンギンの写生をしに行かされた。彼はスケッチを持ち帰り、それが何度か修正を加えられながら、今日までペンギン社の奥付として残っている。》

現在は向って左向きのペンギンに決まっているようだが、初期は右向きもあり、その他いくつかのデザインが使われている。下記サイト参照。
http://www.coverbrowser.com/covers/penguin-books

ところで以上の引用で不審に思われた方も居られるかもしれない。《奥付》という言葉が二度使われている。どうも意味が通じない。どうやら誤訳である。いやいや、正確な飜訳と言うべきか。『新英和大辞典』の第四版にはこうある。

colophon 
1. 刊記、奥付 
2. (本のタイトルページや背などに用いる出版社などの)標識図案

語源はギリシャ語のコロフォンで「頂上」「終わり」というような意味。念のため『出版事典』(出版ニュース社、一九七一年)を見るとこう書いてあった。

《ギリシャ語の〈終り〉を原義とし、15世紀、活版印刷の初期、書物の本文の印刷が終った巻末に、その印刷の年月、場所、印刷者名などを記したもののこと。当初は、この巻末記載が一つの慣例になったが、追って16世紀ころから巻頭に移行し、現在に及ぶ様式になった。わが国の刊記に相当する。しかし、これらが巻末記載であることから奥付と訳している。なお、今日、題扉、背その他につけた出版社の標識・社章を表わす図様をコロフォンと呼んでいるが、これは本来のコロフォンの誤用とされている。》

誤用の誤用は誤用ではない……?

ちなみに『出版事典』によれば「奥付」記載を義務づけたのは、誰あろう南町奉行・大岡越前守であったという。享保七年(一七二二)猥褻書の取締のため発した布令「新作書籍出版之儀に付触書」によって定められた。
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by sumus_co | 2011-03-08 21:18 | 古書日録
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