検印紙を集めている。ま、古本を集めれば、だいたい検印紙が付いてくるので、当り前の二重コレクションではあるが、小生の酔狂を知って、廃棄本の奥付ページだけまとめて送ってくれる奇特な古本屋さんがいるのだ(それも複数!)。これは何百冊になっても大した場所はとりません。
奥付にはいろいろな情報が詰まっていて見飽きないものである。昨年来、ふたたび興味を燃やしている「印」についても、どういう作家がどういう印章を使っていたのか、を知ることができる。芥川はすでに紹介したように有名篆刻家の印を使っており、印の趣味は良かった。夏目漱石は書画もよくしたわりにはさほどでもないようだ(詳しい印譜集も出ているが)。
上は「直」、文豪といえば、この人だろう、志賀直哉。『濁つた頭』(文藝春秋新社、一九四七年)。素人っぽいが……自刻?
谷崎潤一郎『源氏物語巻一』(中央公論社、一九五一年再版)。「紫華余香」。ちょっと軽い。セミプロな感じ。しかも、これは印刷のようである。よほど部数が多かったのだろう。凝り性というのか、谷崎は著作ごとにいろいろな印を使っている。本の形式も多様だし。
川端康成『純粋の声』(大地書房、一九四七年)。美術品コレクターとしても知られることになる川端なので、この印「川端」もちょっとしたもの。プロらしくはないが。検印紙は猪熊弦一郎のデザイン。
小林秀雄『ドストエフスキイの生活』(創元社、一九四一年七刷)。印もまずまずだが、検印紙のデザインが素晴らしい。『書影でたどる関西の出版100』で復刻して使わせてもらった。デザイナーは誰なのか?
近頃、いちばん気に入っているのはこの不思議なハンコ。『串田孫一随想集5』(筑摩書房、一九五八年)。自作であろう。串田の本を捜す愉しみは検印にもある。
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「日本の古本屋メールマガジンその99 2011.1.25」に筑摩書房の青木真次さんがエッセイを寄せている。田村さんのことも書かれていた。
http://www.kosho.ne.jp/melma/