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ナナフシ

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田村治芳さんの原稿を、石神井さんより、形見分けとして頂戴した。『彷書月刊』のナナフシの散歩道のために書かれたもので、『sumus 12/特集・小出版社の冒険』(品切れです)の出版後、「アンダーグラウンド・ブックカフェ 地下室の古書展」に合わせて神田の古書会館で展示およびトークショーが行なわれた、そのときの様子を書いてくださっている。ありがとうございます。

当時の小生の日記を引用しておく。けっこう細々と書いてあって、記憶が鮮明に蘇ってきた。千駄木とあるのは谷中の内澤旬子さんのアトリエに宿を借りていたため。

《2004年6月13日(日)雨のち晴

 早朝、大雨。千駄木の駅のあたりでモーニングセット。前回諦めた洋菓子店イナムラ・ショウゾウはいまだに朝から長蛇の列。鶯谷からお茶ノ水へ。sumus「小出版社の冒険」展、会場の写真を撮る。

 地下の古書展をのぞく。ゆったりと並べてあって見やすい。高額商品が目立ったが、かえってじっくり探す楽しみがあるというもの。とりあえず、かげろう文庫の洋書コーナーで下記のものを入手。

SALOME A TRAGEDY IN ONE ACT , OSCAR WILDE , JOHN LANE, THE BODLEY HEAD , 1908 、500円

 これは正方形に近いB6程度の本。ビアズレーの表紙画。

WILLIAM CAXTON, THE FIRST ENGLISH PRINTER: A BIOGRAPHY , CHARLES KNIGHT , CHARLES KNIGHT AND CO. , 1844 、3,000円

 英語活字による最初の書物を印刷したカクストンの伝記。1474年にブリュージュで『トロイ物語』を刊行し、1476年にはロンドンのウエストミンスター寺院内に英国初の印刷所を設けた。モリスのケルムスコット版の文字はカクストンの復興と言ってよいだろう。(abebooks.com で調べてみると、『CAXTON』は20ドル少々、『SALOME』の方は12ドル程度で、どちらもまあこんなものか、調べは行き届いている)

 午後一時を過ぎると人が増えてきて、生田、岡崎、南陀楼が現れ、古書現世向井氏と立石書店の岡島氏、ゴゴシマ屋の石丸女史(新しい『おに吉』をすこし多めにもらう、今度の号も楽しいね)らとあいさつ。西村氏、吉田氏、濱田氏、神戸から大島さんなども来てくれて心強い。三時には階段のところまで人が行列を作っている。椅子を並べて、『彷書月刊』編集長・田村治芳さんの仕切りでお客様を前の方までずっと詰めてもらってなんとか形ができる。田村さんの動きがきびきびしていて驚かされる。芝居の公演なんかをずっとやってきて場数を踏んでおられるそうだ。

 坪内さんと月の輪さんも並んで前列に座っているし、知った顔も少なくないが、五十人近くの聴衆が熱心に聞いてくださったのは有難いこと。司会が田村さん。トークするのは松本、南陀楼、岡崎、荻原、生田、林。『ARE』『sumus』の発端から自己紹介、小出版社の展示物紹介、理想の古本屋などについてそれぞれの意見を語る。まずは順調に前半終了。

 月の輪夫人が見えたので挨拶する。今回の目録の表紙、本の絵の部分が薄かったかどうかが話題になる。本紙校正(実際に表紙に使う上質紙に印刷した校正刷)はなく、青焼き校正だったので、仕上がったときにはちょっと薄いような気がした。奥さんも同意見だが、月の輪さんは、今の方が絶対いいと主張する。気に入ってもらえれば言うことはありません。

 十分ほど休憩の後、フリ市開始。振り手は田村さん。最近は業者間でもあまり振り市は行われなくなっているそうだ。入札の方が時間と手間が省けて合理的だということなのかもしれない。京都の青空古本まつりでは毎回公開オークションが行われていて、フリの楽しさは知っているつもり。盛り上がりは振り手の口上しだい。田村さん、さすがの名調子。本を取り扱う手つきも手品師のようだ。(なお現在発売中の『本とコンピュータ』夏号に「振り市」の様子が上手に紹介されています。p149)

 岡崎が自分の持参した本を自分で紹介した以外は田村さんが見事にさばき、買い手がつかなかったのは二点だけ。麦書房の雑誌『本』の揃いはけっこう白熱した。明らかに安いという本でも会場にいる人たちの興味の範囲外ならまったく声が出ない。当たり前だが、それがはっきり分かった。松本出品の細川書店本のセットなど、5,000円はあまりに安いので林も手を挙げた。すると荻原が5,500円と横からきたので、0.5秒考えて譲ることにした。

 これでどうにか催し物は終了、盛況で肩の荷を降ろした。帰り際、扶桑書房さんがあいさつしてくれた。いつもとても魅力的な目録をもらっているが、めったに買わないので恐縮する。

 せっかくだからみんなで一杯ということになり、どこにしようか、古書会館の玄関先で迷っていると、坪内さんが「この人数なら三省堂の地下だろう」というので、その「BEER膳放心亭」へ繰り込む。

 最初のメンバーだけ挙げると、坪内さん、月の輪さん、佐久間さん、間村俊一さん、松井氏(平凡社)、鈴木氏(光文社)、内堀さんに、生田は婚約者同伴(今秋挙式予定)、松本、岡崎、南陀楼、内澤さん、林。さらに参加者は増えたが、そのころにはビールがけっこう廻っていたので、失念。このビアホールはなかなかいい。坪内さん、さりげなく仕切る。》
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by sumus_co | 2011-01-17 19:53 | 古書日録
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