林蘊蓄斎の文画な日々
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かくれみの

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『古書月報』の合本(219〜230、一九七三〜四年、227号欠)を頂戴した。東京都古書籍商業協同組合が発行する機関誌である。かつてブログにも書いたように二〇〇七年から八年にかけて『古書月報』の表紙をデザインさせてもらった(http://sumus.exblog.jp/6465402)。そのとき、東京古書会館でバックナンバーをすべて見る機会があった。もちろん表紙だけ。昔はどんなデザインだったかということを知っておいた方がいいだろうという担当者の計らいだった。そのときこの機関誌をじっくりと研究したら相当に面白い本が書けるんじゃないだろうかと思ったものだ。

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論より証拠、この合本(十冊プラス『組合・諸規定集』の十一冊)だけを見ても品川力、青木正美、吉田漱など小生の知っている執筆者がいく人も登場している。それ以外にも面白い随筆や回想が収録されていて古本好きを飽きさせない。たとえば小林秀雄の蔵書について《「遺族の方はかなり値があると思っていらっしゃるようだが、実はがらくたばかりで値のつけられるようなものがくってね」》というような古書店での会話とか、この話を小耳にはさんだ安物買いのA先生がふるえあがる話だとかは身につまされる。

なかでは「かくれみの」というペンネームによる「某月某日」という連載エッセイがなかなか軽妙だ。が、どこかで読んだような……。結婚式の挨拶で何を言っていいか分からなくなり《唄をうたってごまかした》というくだりを読んでハッとした。関口良雄さんじゃないですか。

さっそく『昔日の客』を取り出した。たしかに「某月某日」というシリーズで『古書月報』と『可卦喇』に発表したとされるなかに同じ文章が出ていた。ただし同書で「スワンの娘」として独立しているエッセイは228号に「某月某日」として発表されたもの(上の写真)。それを三茶書房版『昔日の客』では旧仮名に直して収録してある(旧漢字ではない)。これはむろん関口の意志だったと思われるから、さらにそれを新仮名遣いに直した夏葉社版、この点だけは賛成はできない。注目すべきは、222号の「某月某日」。これは『昔日の客』に収められていないようだ。玄誠堂主人芥川徳郎が登場する一篇と父の書いた本を見つける娘の話。関口さんが省いたのであろうか?

ところで、221号には一九七三年七月の明治古典大市会が大成功だったという記事がある。《「一握の砂」のカバー付は五〇万六八九〇円で落札したが明治百年記念大市では極美本カバー無しが七万三、六九〇円で落札している。こうなるとなんとカバー一枚が四〇万円以上もすることになる。それでもお客によっては完全な本を手に入れたい一心で買うのである》……昨日の今日、スケールは違い過ぎるにしても、忸怩たるものあり。
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by sumus_co | 2010-12-02 22:13 | 古書日録
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