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黒岩比佐子追悼

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妻の実家では読売新聞をとっている。十八日の朝、いきなりこの記事を見つけて打ちのめされた。まさかこんなに早く逝かれるとは予想していなかった。その日はずっと気力がなかったが、郷里に滞在中ただ一度だけ、短時間、古本屋をのぞくことができたので、弔い合戦、いや、供養のつもりで、いささかの憂さを晴らした(そのときの買物は後日お目にかける)。

黒岩さんの著書はおおよそ読んでいる。その仕事の徹底ぶりには脱帽するばかり。とても真似はできない。だからといってご本人はそんな厳格な研究の虫タイプではなく(執念の人ではあるのだが)、同席していても実にさわやかな昭和のお嬢様なのである。体育会系(慶応大学の女子軟式テニス部の主将とか)なので体力だけには自信があるとおっしゃっていたが、みなぎるパワーと、美しきものを愛でる繊細さ、正義を愛する純粋さを兼ね備えた希有な女性であった。

2006年6月4日が初対面(たぶん文通はそれまでにあったようにも思うが)、アンダーグラウンド・ブック・カフェの講演の後、升屋での二次会でおしゃべりし、神保町から春日まで地下鉄もいっしょだった。いっぺんでファンになった。

2007年3月17日には御成門の東京美術倶楽部で小生が個展をしたときに、わざわざ寄ってくださった。むろん神保町経由。その収穫をたずさえて。「古い写真集があるとつい買ってしまう」と嘆いて(?)おられたが、絵画や写真など、女史をうっとりとさせるモノが案外とその歴史探究の原動力になっていたのではないだろうか。小一時間もロビーの小テーブルで話し込んだことを忘れない。古本の話だけだったが……。

2007年10月26日、東京古書会館地下ホールの古書展でおっさん連中に負けじと古本に食らいつく後ろ姿を発見。このときに小生がゲットしたのが鈴木三重吉の小型本(津田清楓装幀の『三重吉全集第四篇「女」』)。その後、待ち合わせて神田伯刺西爾で膝詰めで密談する。といっても98%古本のこと。ただひとつ、「こう見えても、私、結婚していたことがあったんですよ(笑)」という言葉が印象に残っている。そうだったのか!

2008年6月1日、やはりアンダーグラウンド・ブック・カフェ(どうして止めちゃったのかなあ、画期的な古書展だったのに)関連の黒岩・林連続講演会が東京古書会館で開かれた。女史は国木田独歩について、小生は佐野繁次郎について話した。一言一句、しゃべる内容をワープロで清書して、そのプリントを見ながら講演しておられた。こちとら箇条書きだけ。この日はアンチ・ヘブリガンで打ち上げ。いい会だったなあ。たしかこの頃、あまり体調万全ではないようなことをもらしておられたように思う。

2009年10月24日は京都の古書善行堂で落ち合った。『三重吉全集』を集めておられるとブログに書いてあったのを読んで、二年前に神田で手に入れた小型本を持参して呈上(前述の古書展で手に入れたのだから奇遇であろう)。小生の案内で京極スタンドへ、N先生と三人で。このときは、はっきりと体調不良を訴えておられた。

今年の六月も上京したのだが、少しの違いでお会いすることがかなわなかった。心残りのような、そうでもないような、複雑な心境である。多くの人々に認められ、不滅の著作をものした執筆家として、おそらく今後とも忘れられることはないだろうから、こちらは物陰からそっと見守りたい気もした(少女漫画か!)。

いや、それはともかくとして、丁寧に整えられたおかっぱ(?)のヘアーをゆらしながら、あきつ書店の棚に食い下がる女史の姿を小生だけのものとしてとどめておきたいのがほんとうのところである。御冥福をお祈りします。

黒岩比佐子さん追悼番組 担当編集者3人が語る
http://www.ustream.tv/recorded/10973875

黒岩比佐子追悼ブログ集
http://d.hatena.ne.jp/mongabook/20101124

紀田順一郎 四季の書斎「本の重さ、電子の軽さ」
http://plus.harenet.ne.jp/~kida/topcontents/news/2010/111802/index.html
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by sumus_co | 2010-11-22 21:04 | 古書日録
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