『風報』百号記念号(「風報」編集室、一九六二年一〇月一日、表紙=加藤英夫)。終刊号。日本近代文学館の書誌情報は下記の通り。
書誌番号:003467
表題 :風報 || フウホウ
巻次・年月次 :1巻1号 (昭29. 7)-9巻10号 (昭37. 10)
出版地 :東京
出版者 :「風報」編輯室
注記 :9巻10号は通巻100号にあたる
注記 :総目次あり 所載資料: 「風報」総目録 (昭37.12) 収録範囲: 1-100号 (昭29.7-昭37.10)
参照ID :AN00213927
この『風報』は第三次である。第一次は昭和十四年九月に創刊、第二号(昭和十四年十月)、第三号(昭和十四年十一月)で終り、戦後すぐ第二次が出たが、こちらも短命だった。日本近代文学館には第一次第二号と第二次の創刊号(昭和二十二年九月)他二冊が収められている。第三次は尾崎一雄、水野成夫、尾崎士郎の三人が同人として多くの書き手を集め、長寿を保ったようだ。
関口良雄が寄稿しているので取り出してみたのである。巻頭から、中村光夫、井伏鱒二、丹羽文雄、村松喬、そして関口良雄という順番。少なくともここに名前を挙げた人達のなかでいちばん良く書けている。井伏の「盆踊」は珍しくつまらない。これらの他には庄野潤三の「今年のムカデ」が読ませるのと岡部千葉男の「「禽獣」の原稿」がおもしろい。
出だしだけだが、関口さんの語り口を知っていただきたいと思って拡大してみた。この後、久米正雄の売れない本をずっと店に並べていることについて触れて、その理由は、昔、久米の講演を聞きに行って好印象をもったからだとか(でも《私は久米正雄の本はあまり読んだことがないけれど》というのが関口さんらしい)。
つづいて古本買い取りの話になる。呼ばれて行ってもいざとなると売り渋る人がいて、夫婦喧嘩になった例。逆に《死ぬまでは売らないよと常々云つていたお客さんが、何と思つたか急に気が変わり、私を呼んで一斉に、書斉の本全部を、売り払った事があった》。関口さんが荷造りにかかったとき、そこの奥さんが出て来て、ビックリ仰天、今まで一冊も売ったことがなかったのに、あなたどうかしたんですか、となだめにかかったという。
そして最後に志賀直哉『夜の光』の見返しに書き込まれた文章を紹介して締めている。これがまたいい内容なのだが、それは『昔日の客』に収録されているので、そちらで楽しんでいただきたい。
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明日は神戸へ。ギャラリー島田へ搬入の日。うまく並べられるかどうか、もう何十回とやってますが、並べてみるまでは不安です。
個展スタートは2日(土)からです。お待ちしております。会場にいない日もあります。作者に面談ご希望の方はあらかじめメールいただければ出勤するようにしますので、ご遠慮なく。欄外の「メモ帳」の「お問い合わせ」をクリックしていただければメールフォームが起動します。コメント欄でもけっこうです(非公開にもできますので)。