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スーパーヒーローの墓場

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安田有『スーパーヒーローの墓場』(砂子屋書房、一九八六年一〇月二五日、装幀=三嶋典東)。某氏より頂戴した。

《昨日、知人が結婚祝いに(10年たって、まだ気にかけていてくださる)と、本を赤帽さん一台分くれました。その中に安田有さんの『スーパーヒーローの墓場』があったのですが、必要ですか?》《チラ見してこの詩は、実に新鮮で、タノシイものでした》

必要ですと答えて送ってもらった。安田さんは奈良のキトラ文庫の御主人。小生も寄稿していることから本ブログでも紹介してきた『coto』という雑誌をやっておられる。残念なことに次号(たぶん年内に発行?)第二十号で終刊が決まっている。安田さん自身『coto』に毎号作品を発表しておられるが、二十数年前の詩集は知らなかった。冒頭はこんなかんじ。

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栞にはこの詩集におくる文章、吉本隆明「蠢く家族」とねじめ正一「ここはどこ? わたしはだれ?」が収められており、これはゴーカである(安田さん、ただものじゃないと思ってました)。そして安田作品に対する二人の意見がまったく対立しているのもまたおもしろい。

ねじめ正一
《安田有の最上の作品に共通しているのはたのしさ[四字傍点]である。》《うまい詩ではない。実験的な詩でもない。人間の内面やら痛みやら、ヒマを持てあました文学好きが喜びそうなテーマを追っかけているわけではもちろんない。安田有の詩は、そういったもろもろのころからまったく自由で、ただひたすらたのしくうれしく、読んだ人間をいい気持ちにさせてくれる。》

吉本隆明
《詩人はいってみれば生田長江や葛西善蔵や嘉村礒多の系譜に属する詩人だとおもう。私小説とおなじように私詩というカテゴリーを設定できるとすれば、この詩人は私詩の試みを長江や善蔵や礒多のように暗澹とした筆のさばきで執拗にやっていて、それは間違いなく読む人を惹き入れてゆく力をもっている。》

こんなにハッキリと同じ詩集に対して意見が分かれるものなのか。小生はどちらも一理はあり、一理はないと思う。《読んだ人間をいい気持ちにさせてくれる》は本当だが《文学好きが喜びそうなテーマを追っかけているわけではもちろんない》という意見には反対である。《暗澹とした筆のさばきで執拗にやっていて》というのもちょっと違う。もし吉本が善蔵や礒多をこのように読んでいるとしたら、いくらなんでも浅いだろう。ユーモアである。暗澹としたなかにそれを突き抜ける、突き放すユーモアの力がこもっている。そして《うまい詩ではない》とは決して思えない。《読む人を惹き入れてゆく力をもっている》ということは「うまい」ということなのだ。
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by sumus_co | 2010-09-18 20:56 | 古書日録
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