林蘊蓄斎の文画な日々
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凌雲閣/十二階

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四代目一寿斎国政「浅草公園凌雲閣登覧寿語六」(福田熊次郎、一八八九年一一月)。『江戸・東京モダン』展図録(東日本鉄道文化財団、一九九八年)より。これは楽しい双六絵だ。もちろん細馬さんの『浅草十二階』にも登場している。

《絵師は三代歌川国貞。描かれたのは明治二三年、十二階が開業した年だ。
 この「凌雲閣登覧寿語六」を見ると、一人、気になる登場人物がいるのに気づく。
 落下傘につかまり、上空から悠然と紙吹雪をまいている男。その後ろには気球が浮かんでいる。シャガールの登場人物を思わせる夢の図像だ。しかし、これは空想上の産物ではない。
 男は「風船乗りスペンサー」と呼ばれた。》

おもしろい。明治時代にはいろんな外国人がやってきたんだなあ。あれ? スペンサーの下の方で飛び降りている男が! 急転直下「ふりだしへもどる」と書いてある。よく見ると地面で男達が風呂敷のようなものを拡げて受け止めようとしているのが分かる。さすがの細馬さんもこれが事実に基づくものなのかどうかまでは書いておられないが、ひょっとして無鉄砲な職人か誰かがこんな実演をやったのかもしれない(?)。

なお「四代目一寿斎国政」(この版画の署名)の来歴をウィキで見ると明治二十二年に三代国貞を継いでいる。ということはこの作品の前年に改名していた。にもかかわらず国政のサイン? おそらく安政五年(一八五八)の三代豊国への入門以来使用していた名前だから、きっと国政の方が知られていたのだろう。開化絵を得意としたからなおさらだったかもしれない。

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織田一麿『東京風景』の内「十二階」(一九一六年制作)。細馬さんによれば

《明治三十年代から急激に増えた銘酒屋は、凌雲閣の下、現在の花屋敷の裏あたりから千束小学校あたりまでに密集するようになり、やがて「十二階下」と呼ばれる私娼窟となった。明治四十年代になると、十二階は、その眺めよりもこの十二階下によってつとに知られるようになっていた。》

ということなので、この織田の石版画などはまさにその雰囲気を現わしたものだろう(残念ながら『浅草十二階』には収録されていないが)。なんとも頼りなげな十二階の描き方。「十二階」というよりやはり「十二階下」である。一寿斎国政の錦絵とはまったくもって対照的。
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by sumus_co | 2010-09-17 20:37 | 古書日録
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