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古本のことしか頭になかった

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山本善行『古本のことしか頭になかった』Sanpo magazine 別冊vol.1(大散歩通信社、二〇一〇年八月二五日、ブックデザイン=朝日久美子、題字=岡崎武志)。『エルマガジン』に連載した「天声善語」を単行本にしたもの。プラスその後の展開やコメントを加えてあるのがいい。これによって鮮度が保たれ面白さが倍増した。

たとえばいきなり天野忠『我が感傷的アンソロジィ』(書肆山田)の追加コメントにこう書かれていてショックを受けた。

《大好きな『我が感傷的アンソロジィ』は、めでたく一五〇部限定の文童社版もこのあと入手できた。天野忠詩集も、『石と豹の傍にて』(白鮑魚社)、『肉身譜』(丸善株式会社京都店)と買い続ける。実は私、高い本も買っていました。》

さらりと書いているが、この三冊、そうとうにレアものである。高いとか安いとか、そういうレベルではない。また次のコラムに『1Q84』が出て来る。それはジャズのカセットブック。

《カセットブックのタイトルは『1Q84』だった。ジャズ好きの村上春樹のことだからこのカセットブックのことを知っていて付けたのかも。》

『1Q84』……まったくヒネリなしだな。『ノルウェイの森』は「イ」が違う(これは著作権の問題だろうが)。ちなみに「ノルウェーの森」(Norwegian Wood  This Bird Has Flown)は誤訳であることを訳者も認めているらしいが、この wood は森ではなく、ノルウェー産の木材(パイン)による内装だとポール・マッカートニーが証言している(ウィキによる)。むろん駄洒落好きのジョンがヴォーカルなのでそれ以外の意味もあったかもしれない。

二〇〇六年に買った古本ベストテンというのがまた凄すぎる。

・名言随筆サラリーマン 福田定一
・監禁 小林信彦 角川文庫 カバー金子國義
・貴女のためのアイディア 中林洋子
・黄色い楕円 北園克衛
・無名の南画家 加藤一雄 三彩社版カバー付き
・立志立功 幸田露伴
・田園記 井伏鱒二 作品社 装幀=佐野繁次郎
・星を撒いた街 上林暁
・枝の祝日 竹中郁
・世の中へ 加能作次郎 新潮社大正八年

番外編もあるがうらやましいので略す。

通読して思うのは、新しい文学の読み方、捉え方が巧まずに提示されていることだ。《新しい視点をもった文学史を出してほしい》という希望を述べたくだりがあるが、まさにこの本こそ、そのスイユ(敷居)に位置しているのではないか。とにかくオススメの一冊。装幀、組版、イラスト、すべてがシックに仕上がっている。



ここ数日「不肖の身」という言葉をよく耳にした。本来の「不肖」とは《父に似ないで愚かなこと》(広辞苑)。『史記 五帝本紀』(前一世紀)の堯、舜という英明君主たちの逸話のなかに出るのがよく知られている。

 堯知子丹朱之不肖,不足授天下(十七)

 舜子商均亦不肖,舜乃豫薦禹於天(二十六)

堯は息子が天下を授けるには不足だと見て、血縁のない舜に譲った。舜もまた息子は不肖だから禹に譲ったというようなこと。不肖が跡継ぎするのは良くないのだ。

ただし「不肖の父」という用例がないかというと、『孔子家語』(三世紀頃編集)の「七十二弟子解」にこうある。

 冉雍,字仲弓,伯牛之宗族。生於不肖之父,以德行著名。

単に「愚かな」の意味で用いられていたようだ。

もちろん日本でも《愚かなこと》《運の悪いこと》《自分の謙称》というふうに使われてきているから誤用というつもりはない。《運の悪いこと》という意味にとるのがいちばんぴったりくるのかなと思うだけである。
by sumus_co | 2010-08-30 21:30 | おすすめ本棚
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