林蘊蓄斎の文画な日々
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増刊アトリエ

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下鴨初日に千円で出ていた。五日目に行くと百円均一に! 古茂田守介が執筆している『増刊アトリエ 人物デッサンの描き方 洋画技法シリーズ3』(アトリエ出版社、一九五五年七月一〇日再版、表紙構成=高橋錦吉、表紙デッサン=海老原喜之助)をあわてて拾い上げた。古茂田のデッサン、技巧的とはとうてい言えないが、真面目な画風で、かみしめるとじんわり滲み出る味わいがある。

《私は普通学校や研究所で学ぶ筈の石膏デッサンというものを殆どせず、いきなり人体デッサンに入つたのです、別に強い信念があつたわけでもありません。》

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守介は兄の公雄の導きで画家の道に入った。一九三七年、十九歳で猪熊弦一郎に引き合わされ、猪熊の指導する新制作田園純粋美術研究所に通い始めた。翌年、猪熊は渡欧。次いで脇田和に師事した。二十二歳で新制作派協会展に初入選、脇田のアトリエで人体デッサンに励んだ。一時、大蔵省に勤めるが、二十八歳で退職、以後、画業を専らとした。生来、喘息に悩まされ、四十二歳のときに発作によって窒息死。(『古茂田守介の全貌展』一九九五年、より)

《つまり、私の描いていた数多くのそれらのデッサンは、絵画を始めるための基礎的デッサンであるという大切な目的をしつかりと自覚していなかつたのです。
 私はそれをやつたことによつて、絵画の基礎が如何に大切であるかということを感じる様になつたのですが、さてその基礎というものゝ限界をどこに置くかということです。それは在つて無い様なものなので、はつきり決めることは出来ないと思いますが、このことは各自で決めてかゝるべき大切なことゝ思います。》

もう一冊『増刊アトリエ 愉しいスケッチ・シリーズ 四季の風景スケッチ描法』(アトリエ出版社、一九五五年八月一五日)には風間完の執筆があった。

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風間は一九一九年生まれ、東京高等工芸学校卒業後、二年間兵役を勤め、戦後は一九五三年に挿絵画家としてデビュー(朝日新聞夕刊小説の邦枝完二「恋あやめ」、ウィキによる)、二〇〇三年に亡くなるまで非常に多作で幅広い活躍をした。それがかえって評価を拡散させてしまっているようだ。初期の風景画などは松本竣介にも通じる抒情があるように思う(このアトリエ掲載の作品よりももっと古いもの、あまり多くは見ていないが)。

《画家は彼の仕事場以外の凡ゆる場所で受けた感動をそのまゝ、仕事場で白いカンバスに向つて再現しようとする、そして一枚のタブローが出来上るまでこの感動を持続させようとする。デッサンというものは、この事のためにあると私は思う。言わば感動のメモなのである。》

《まじめに生きてゆく事は何の商売でもむずかしい事であるが、画家は羽子板の絵や似顔絵や挿絵を描いて暮らしても、はた又凡そ絵に関係無い仕事で生計を立てていても画家として立派に暮らせる筈だと思う、否、そうした生々しい日々の苦悩の中でこそ画家は育つてゆくべきである。》

芸術家としての画家という観念が固くつきまとうのは、大正生まれのこのあたりの世代なのだろう。



『日本古書通信』973号に大阪のハナ書房さんが登場。

《古本屋を始めて三年半になります。こんなに面白い商売はないなと思う毎日です。》

例によって好調なのはモダニズム資料だそうだ。それから戦前の少年物、『コドモノクニ』とか『金の船』などはアメリカなど海外からの注文が非常に多いそうだ。とくに村山知義への注目度は高いという。海外の業者が年に三回四回やってきてゴッソリと買い占めて帰るとか。こう円高じゃあ彼らも大変だろうに。
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by sumus_co | 2010-08-18 20:57 | 古書日録
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