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出版、わが天職

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青大将……じゃないか。一八九〇年代のアメリカのサインボード。ニューハンプシャーの禁酒会の建物に着けられていたそうだ。赤目、傷、冗舌、口論、悲しみ。

÷

J・エプスタイン『出版、わが天職』(堀江洪訳、新曜社、二〇〇一年一二月一〇日)を読了。するとタイミングよくアメリカ合衆国で最大の書店チェーン、バーンズ・アンド・ノーブルが身売りかのニュース。身売りとというわけではなかったようだが、絶好調でもないようだ。

一九六〇年代初、レオナード・リッジオ(Leonard Riggio)がニューヨーク大学の学生時代に大学書店で働き始め、グリニッジ・ヴィレッジに「the Student Book Exchange」を開店したのが一九六五年。七〇年代に手を拡げ、経営不振だった五番街十八丁目のバーンズ・アンド・ノーブル(Barnes & Noble)を手に入れ、数年で世界最大の書店へと変身させた。一九七四年には書店としてアメリカで最初のテレビで広告を打った。ベストセラーの大幅値下げを断行したりもした。

さらにローカル・チェーンの「BookMasters」と「Marboro Books」を買収してバーンズ・アンド・ノーブルのディスカウントストアとした。「Marboro Books」買収により全国規模の通販市場を手にし、これを機に絶版書の復刻出版にも手を着ける。

八〇年代にはいると郊外型のスーパーストアを展開。一九八七年に「B. Dalton Bookseller」797店舗を買収した。これにより一夜にして全米第二の書店チェーンとなった。さらに「Doubleday Book Shops」を買収し、マクミランからスクリブナーズ・ブックストアの商標を獲得した。

広い床面積で、ゆったり座れるソファーを置き、立ち読み歓迎、スターバックスと組んで店内にカフェを作るという店造りが売りである。

インターネットによる書籍販売にも八〇年代から関与し一九九七年に「Barnes & Noble.com」を開設。今日では米国最大の書店サイトとなっている。ニ〇〇一年一月にMicrosoftとの契約を結び、Microsoft eReader用の書籍を取り扱うオンライン上の電子書店を開設して全米の店舗で大々的な宣伝活動を展開することに合意したが、これが成功せずに、ニ〇〇三年には電子書籍の販売を打ち切るとの声明を、同社ウェブサイト上で公開した。その後、ニ〇〇九年になって「Fictionwise」を傘下に収め世界最大のeBookstoreを設置(百万タイトル以上と謳っている)、ヌック(nook)という独自のリーダーを導入している。が、どうもこちらも苦戦しているらしい。

÷

J・エプスタイン『出版、わが天職』はちょっとまとまりのない内容だが、断片的には面白い。エプスタインはダブルディに入社後ランダムハウスへと移り、一九六〇年にペーパー・バックスの「アンカー・ブックス」を創始して名を成した。六三年に書評誌『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』を創刊。八〇年代にはアメリカの古典文学を定本化した「ライブラリィ・オブ・アメリカ」、八九年には『リーダーズ・カタログ』(新刊書の通販カタログ、四万タイトル二千頁)を発行して書籍のネット通販に先鞭をつけた、というような人物。

彼が電子書籍についてこのように発言している。

《新技術は本の流通を根本から変えるだろうが、編集とパブリシティという、出版に不可欠の仕事を外すことはないだろう。原稿はいっときに一歩ずつ、手仕事をとおして本へと姿を変えてゆくのである》《タイプライターやインク壷に代わるコンピュータの問題含みの有利性は別として、新技術はこの過程を簡単にしたり向上させたりするものではない》

また書店についてはこうも書いている。

《これからの書店は、ネット書店がなろうとしてなれないものになることが必要なのだ。手に触れることが出来、親密で、地域に根ざすもの、関心をともにする人々の輪に喜びと知識をもたらしてくれるコーヒー・バーなどがある、地域の聖なる場、必要な本はいつでも見つかり、どの棚からも驚きと誘惑が湧いてくる殿堂となることが》

こんな本屋はいつの時代も難しいかも。
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by sumus_co | 2010-08-04 22:18 | 古書日録
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