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小さき町にて

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シャルル=ルイ・フィリップ『小さき町にて』(淀野隆三訳、高桐書院、一九四七年)。

《フィリップは木靴屋の息子であつた。彼の祖母は彼の父をつれて物乞ひの生活を送つてゐた。つまり乞食の子である。この生まれつきを自然に(人為的でなく)自覚することからフィリップの作品は創られてゐる。彼には「人民の中へ」といふ意識はいらない。彼自身が人民なのである。人民の中なる光源なのである。彼はただ照らし出すだけであるーー周囲の人びとを。》(淀野隆三「再刊にあたりて」より)

初刊は岩波文庫(一九三五年)とのこと。調子のいい訳文だ。

÷

昨日の続きで、小山清の『小さな町』から古本屋の描写を少し引き写してみる。主人公が働いている新聞販売店の近くに古本屋ができた。吉原遊廓のすぐ裏である。「私」は

《この店から本を借りて読むやうになつた。或る日もういゝ齢の男の人がゐて私に話しかけた。私の返した本が百間随筆であるのを見て、「これ、面白かつたですか?」と話しかけた。》

《本を借りて読む》は貸本もやっていたと考えるべきか。話しかけてきた男性が主人の杉本で、古本屋は奥さんの内職のかたちだという。二人は親しくなる。そのうち杉本から結婚しませんかともちかけられた。相手は吉原土手で古本屋をはじめた女性である。

《本屋の市のある日には彼女は杉本さんのとこへ寄つてそして連れ立つてゆく。》

見合いのような顔合わせがあり、私は彼女の店を偵察する。旧知のSが店に出入りしているのを知る。

《Sといふのはやはり本屋仲間で、店は張らずに立場などで見つけた品を市へ持ち出したり、または直接仲間に融通したりして身過ぎしてゐる連中の一人で、私は前から顔見知りではあつた。竜泉寺町の市電の停留場の前に古本屋がある。AさんといつてH大学を出てからこの商売を始めた。》

私は彼女の店を訪ねる。

《彼女の腰かけてゐるその脇の雑誌の積んである台に、ひととこ積んである雑誌を彼女がわきへ除けて私は腰を下した。彼女の店は小さく、私の大きい図体が目立つやうだつた。》

彼女に店を貸しているのは隣の鋸屋だった。座敷は隣と通じていた。彼女は私に本屋をやってみたらと勧める。

《現在彼女の店は平均して一日五円ほどの商売はあると云ふ。》

《彼女は立場などで集めた品を一旦家へ持ち返つて、それから店へ行く。後でお父さんがそれを自転車で店まで持つてきてくれたりする。》

《彼女は十時頃店を閉める。十時閉店の商店法の実施される少し前のことで、杉本さんのとこでは御主人の帰宅がおそかつたりして、かなりおそくまで店に灯が点いてゐた。》

《「今日はいゝ成績だつたわ。拾円もありましたわ。それに買ひも少しあつたから、それを足すと、拾四、五円位になりますわ。」》

《「杉本さんは雑誌なども大抵仲間から買ふでしよ。私はあちこち歩くから、少し安く出来るのよ。私、あんまり儲けられないわ。本屋つて泥棒みたいですわ。」》

《「『麦と兵隊』が本になりましたね。」
「もう出てますか?」
「出てゐますよ。三谷の停留場を一寸越したとこに一軒あるでしよ。あそこにありましたよ。」
「幾らついていました?」
「八十五銭だつたな。」
「安いわ。……貴方買つてきてくれません?」
「え? 僕が? 八十五銭でいゝの?」
「さうね、八十銭に負けさせて。」
「負けるかな?」
「負けないかな?……かう云へばいゝわ。読んだらすぐ持つてくるからつて云へば。」》

《内山といふのは絵本、廉価本の類の問屋である。私は棚の前に立つて本を見てゐた。彼女は風呂敷包みを解いて最前買つた月遅れの雑誌などを奥さんに見せた。
「ま、きれいですね。」
「えゝ、あまりひどいのはねえ。」》

《「夜は客が来ますから、小山さん、昼間話しに来て下さい。昼間は退屈してゐますから。」》

《一日彼女は盗難に遇つた。入口の鴨居に下げた新刊雑誌を二冊盗まれた。たまたま常習者にやられたらしかつた。
「甚大な被害よ。痛手だわ。」と彼女は云つた。悄気切つてゐた。》

《素人の店などから値になる品を抜いて儲ける、そんなことも連中はやつてゐた。彼女の店で私がめぼしい品を物色してゐる風にHは見たといふわけなのだ。》

《◯◯倶楽部の前に来た。この方面の本屋仲間の市はこの貸席で開かれた。市は所定の日に十時頃から昼過ぎまでで終つた。》

《部屋の押入れの中には、本の包みとゴム・バンドが溜つていつた。私はそれを捨てずに溜めていつた。私は彼女のとこへは行かぬ心でゐる。が、包み紙とゴム・バンドを捨てる気になれなかつた。溜めて彼女に贈りたい気持があつたのだ。本屋歩きから帰つてその日買つた本の包み紙とゴム・バンドを押入れに仕舞ひながら、私は時にさういふ自分の心を省みてみたりした。》

《その日私は彼女の店で棚の本を見てゐる中、一冊の本の頁の間に四つ葉の苜蓿の挿んであるのを見つけた。
「これは縁起がいゝ。」
「へえ、それは縁起がいゝの?」
「うん、縁起がいゝんだ。」
他意はなく、たゞ口先きの戯れに、云つてみたまでだつた。》

……とまあ、どうだろう、下町の古本屋のいろいろな場面がいたれりつくせりに描かれている。十時まで開いている古本屋か、これからちょいと出かけたくなる。
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by sumus_co | 2010-07-22 21:06 | 古書日録
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