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本との出会い『黒いユーモア選集』

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『みづゑ』761号、アンコール。この号の「本との出会い」コーナーに澁澤龍彦が登場しており、アンドレ・ブルトン『黒いユーモア選集』の想い出を語っている。『澁澤龍彦全集』では第十巻に「『黒いユーモア選集』についてーーアンドレ・ブルトン」として収録されているようだ(別巻2の著作索引による。この巻しか架蔵しないので)。

澁澤は昭和二十年に旧制浦和高校に入学した。入学式は七月一日(別巻2の年譜による)。勤労動員で授業は夜だけだった。戦争が終わってもすぐには外国の本は手に入らなかったので、

《私たちは配給の手巻き煙草を吸いながら、マントの裾をひるかえして神田の街をほっつきまわり、洋書専門の古本屋の棚を、血まなこになって漁って歩いた》

《海外文学の情報をどしどし私たちに提供してくれたのは、そのころ春山行夫氏の編集していた「雄鶏通信」、鎌倉文庫発行の「ヨーロッパ」、京都の世界文学社発行の「世界文学」などの諸雑誌で、私たちはそれらの貴重な記事をむさぼり読んだものである》

浦和の同学年には出口裕弘、一学年下には菅野昭正、野沢協がいた。そして二度受験を失敗して三度目に東大のフランス文学科にはいったのが昭和二十五年。

《しばしば新宿紀伊国屋書店の洋書部に足を運んで、ずらりと並んだフランス書籍の棚を眺めたり、分厚いカタログのページを繰って、新刊書の註文をしたりするという楽しみをおばえるようになった。あの犬屋の横のせまい角を曲った、映画館と喫茶店のあいだに挟まれた、今はなき木造の紀伊国屋書店である》

このころ一九五〇年に出た増補のサジテール版『黒いユーモア選集』(Anthologie de l'humour noir)を買って大きな影響を受けたという。

《私が正統の文学史や、正統の美術史を軽蔑することをおぼえたのも、私自身の生来のアカデミック嫌いもさることながら、このブルトンの『黒いユーモア選集』にあずかるところが大きいと申さねばならぬ》

ポヴェール版の『黒いユーモア選集』
http://sumus.exblog.jp/9948638

澁澤の言う《犬屋の横のせまい角を曲った》が気になって最近手に入れた『株式会社紀伊國屋書店創業五十年誌』(紀伊國屋書店、一九七七年)を開いてみると、ありました、「犬」。

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そしてこちらが店内。同書掲載の「紀伊國屋と私」のエッセイのなかで玉虫文一が《パリ・ラテン区のいくつかの書店を連想させるものがあった》と書いている通りと思う。昭和二十二年、前川國男設計のこの二階建ての店舗は完成していたが、洋書輸入を開始したのは昭和二十四年四月である。

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《新宿の表通から小店の立ち並んだ細い路を通って住宅風の玄関口を入り、奥まったところの階段を上って二階の洋書部を一巡することは一つの楽しみであった》(玉虫文一)

《二階建てバラックの、だだっ広い建物を建てて、その一足ごとにぎしぎしと音を立てる二階一面に、欧米の書物を並べたのも、この輸入再開後まもない頃であった。もちろん当時はどの店もバラック建てであったのだが、妙にがたびしするその建物の中に並べられた洋書の数量は、まことに壮観そのものであった》(佐藤輝夫)

表通りに面したビルになったのは昭和三十九年。オリンピックの年である。この店舗はよく通ったので覚えている。通ったのは紀伊國屋画廊だが。常設展示されていた森芳雄の「二人」(一九五〇)が見たくてちょっと上がって行くということもあった。

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紀伊國屋書店といえば『scripta』16号の内堀弘さんの連載は『文藝耽美』を始めた徳田戯二(とくだ・じょうじ)について。金がなくても雑誌をつくるのが好きな人間は昔からたくさんいたのだ。

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工作舎さんよりメールあり。

《先週末26日の黒岩さんと岡崎さんのトークイベントは、入場者も120名を超え、おかげさまで大盛況のうちに終わりまし た。

京都ジュンク堂BAL店での黒岩さんと古書のフェア(タイトル 仮)が7/17からスタートと決まりました。》

ということで『sumus』メンバーが黒岩比佐子にちなんだ選書をするという話になった。大分前に連絡があって、とっと選書はしていたのだが、締切が昨日だとは思ってなくて、ほったらかしてあった。本日あわてて送信。新刊を選ぶのは品切れかどうかをチェックしなければならない(アマゾンを使う)。品切れになっているタイトルは多いけれど、かと思えば、別の版元から蘇っていたりして、感心もした。
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by sumus_co | 2010-06-29 21:12 | 古書日録
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