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牧神の午後

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柏倉康夫『牧神の午後 田園詩』(左右社、二〇一〇年五月三一日、挿画=加藤茜)。最近、筑摩書房の『マラルメ全集』(一九八九年〜二〇一〇年)が完結した、などということにはまったく関心がなかったのだが、なにか小生の周辺ではちょいとマラルメ日和なのである。柏倉氏には『生成するマラルメ』(青土社、二〇〇五年)の著書もあるが、目下梶井基次郎について執筆しておられるということから淀野日記の記述に関してメールのやりとりをさせていただいており恵投に与った。

《この度、ステファヌ・マラルメの「牧神の午後」を飜訳し直して、一冊の詩集をつくりました。1876年にマネの挿絵入りで195部がつくられた「L'APRES-MIDI D'UN FAUNE」のオリジナル豪華詩集にはおよびもつきませんが、紙、インクにこだわってみました。挿絵は大阪在住の若い版画家、加藤茜さんにお願いいたしました。》

という挨拶文が挟まれていた。封を切るとたしかにインクの香りがたちのぼってうっとりとなった。これは iPad には望めないだろう。まあ棲み分けというところに落ち着くんじゃないだろうか。

マラルメの「L'Après-midi d'un faune : Églogue」は『半獣神の午後』(鈴木信太郎訳、江川書房、一九三三年)、『牧神の午後』(犀東日路士訳、椎の木社、一九三六年)などの時代からいくつかの邦訳があって、較べてみれば面白いのだろうが、残念ながらそういったテキストは手近に持ち合わせていない。あったはずの鈴木信太郎訳の『マラルメ詩集』(岩波文庫)すら見つからないのはうかつこのうえなし。

ということでここではおとなしく柏倉氏の訳文を引用してその巧みな業を嘆賞したい。この作品はマラルメが紙のつぶてを生徒たちから投げつけられたりしながらリセの教師をやっていた二十三歳(一八六五)から書きはじめた作品で、「Hérodiade」という詩に行き詰まっていたとき(結局完成せず)、幕間の寸劇のつもりで一気に執筆したものらしい。「フォンの即興」「フォンの独白」という試行の後「フォンの午後」に結実した。刊行は上記のごとく一八七六年。

筋立てはフォンがニンフの姉妹にちょっかいを出し、いざというところで逃げられてしまうというようなもの。古くさいといえば古くさいが、語り口はおそらくマネの筆法と同じくらい当時としては斬新だったのだろう。意味が取りにくいところギリギリまで文は解体されているようで、じつは綿密につながっている。主題も(主題があるとしてだが)寸劇らしく《下品にならないエロトロジィ》(アンリ・モンドール)である。

 二人の唇がもたらす甘い空しさではなく
 不実なものさえそっと安心させる口づけは、
 私の胸には何のしるしもないのに
 おごそかな歯の神秘な噛み痕をたしかに実感させる。
 だが、それよりも、秘法が心を許す友として選ぶのは
 青空のもとで奏でる一対の太い葦笛。
 それは、頬に感じる悩みを引き受け、
 長い独奏のうちに、まわりの美しさと
 私たちのつまらぬ歌の美を混同して
 楽しむことを夢見る。
 そして、愛がその模様を指で描くのと同じあたりを
 私は閉じた眼で追い、背中や
 あるいは純白の脇腹の月並な夢から、
 よく響くが、むなしい単調な線を消し去ってしまうのだ。

詩篇中ほどの一節。じつに上品に現代語に移し替えられているが、原文を見ていただければ分かるように、なぞなぞみたいな言葉遣いで、たぶん飜訳者十人十色の日本語になるはず。例えば『spin』02のトーク「飜訳をめぐる意味と無意味をめぐって」で鈴木創士さんがこう発言している

《ただ、日本語は助詞があるから、てにをはをうまく使うことによってニュアンスまで出せるということがあります。他のどの言葉よりもサッと一気に向こうの言葉に近づけるような気がする。まったく異なる言語体系だからそれができるのかも。》

まさにこの発言を地で行くのが柏倉訳「牧神の午後」のような気がする。ただ、多少の危うさもある。意味が見事に通り過ぎるという。読者はサッと一気に別の場所へ連れて行かれてしまっているかもしれない。まあ、それはそれでまったく問題はない。もともと「牧神の午後」が誘導する特定の場所があるとも思えないし。あったとしてもそれは日本語では容易に越えられないパズルかもしれないし。

「半獣神」と「牧神」については以前にも書いた。
http://sumus.exblog.jp/11121535

「L'Après-midi d'un faune : Églogue」版本については下記に。
http://sumus.exblog.jp/11112285

『STÉPHANE MALLARMÉ POÉSIES』(NOUVELLE REVUE FRANÇAISE, 1914)は下記に。
http://sumus.exblog.jp/7294270

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『牧神の午後 田園詩』を頂戴する少し前に、たまたま某書店の五百円均一棚でアンリ・モンドール(HENRI MONDOR)『マラルメ伝 VIE DE MALLARME』(GALLIMARD, 1941)を見つけてふらふらっと買ってしまった。これがまた『広辞苑』ほどにも分厚いので絶対読むことはないと思ったのだけれど、今回、関連箇所を拾い読みして補足した(全集の註釈などはまったく見ていないので間違っていたら訂正願います)。マラルメ日和というのはそういうことである。
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by sumus_co | 2010-06-06 21:00 | おすすめ本棚
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