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アンドレ・ブルトンポンピドゥーセンターの売店で求めた絵葉書。十枚買うと一枚オマケしてくれる。手前はよく知られたアンリ・カルチェ-ブレッソンが一九六一年に撮った晩年のポートレート。奥は一九二九年頃に撮られた一枚。『ナジャ』から『シュルレアリスム第二宣言』の頃。 『トポール伝』の著者フランツ・ヴァィヤン(Frantz Vaillant)はローラン・トポールがブルトンと出会ったときの様子を次のように描いている。まずはトポールの友人ジョドロウスキがブルトンの仲間になった。 《ジョドロウスキは一区のルーブル通りにあるラ・プロムナード・ド・ヴェニュ(美神の散歩道)にもよく通っていた。そこは、もしアンドレ・ブルトンのお気に入りのカフェでなければ、とりたてていうほどの場所ではなかった。 シュルレアリスムの父はそこで弟子たちや、大げさに敬意を表する取り巻き連中を謁見するのを好んだ。 雰囲気が愉快なことはめったにない。いかなる批評をも意に介さない老主人はシュルレアリスム運動の偉大な時代と同じように誰が彼にとって良い人間かを判定し続けていた。とりわけ独裁的に、すべての新入会者を認め、あるいは拒んだ。気に入らない者は話し合いの余地なく除名した。ブルトンは少々時代遅れな雰囲気のなかで有名な審判を執り行った。まさに統治の末期。お気に入りたちの宮廷を見るようなものである、多かれ少なかれ、奴隷、おべっか使い、文字通り大物に近づけて有頂天になっている者ども。 ジョドロウスキはどうやってブルトンと接触したのだろう? 彼は言う「俺はシュルレアリストのジャン・ブノワ(Jean Benoît)、例のサドを顕彰した大宴会をやっつけた奴と親友だったのさ。奴は胸にサドの烙印を押していたよ。俺は奴にブルトンのケツにそれを押し付けてやれよとすすめて、歴史に残るぜと保証してやったが、奴さんはブルトンを尊敬しすぎていたよ……」 ローランとアラバルがそのカフェの門を入ろうと計画していたのかどうか分からないが、ジョドロウスキのおかげで彼らはブルトンに会うことができた。 期待に反して、会見はばかげた成り行きとなった。ローランは、すぐに、その有名人の異議を許さない、もったいぶった様子に耐えられなくなった。そして決して忘れられない場面を目撃した。 その日、かたわらにアメリカ出身の女性が座るや、ブルトンはいきなり爆発した。「そなたはCIAの女スパイに相違ない! 出て行かれい!」、シュルレアリストたちも声をそろえた「そうだ、出て行ってください!(Oui, sortez!)」。だが女客は従うことを拒んだ。彼女は警官を呼ぶと脅した。グループに参加していたただ一人の女性ジョイス・マンスールはただちにペリエの壜をひっつかんでその女に水をふりかけた。大失敗! ジョイスは狙いを外した……ミネラル・ウォーターをかぶったのはブルトンだった。 ローランはといえば、余計者だった。「ぼくは急いでクリネックスを買いに走った。窒息しそうだ! 分かるだろ。ブルトンが予言しているときにはクシャミさえできないよ、ばかげたことはひどく罰せられた。そこでは誰にも友人を選ぶ権利はない。ブルトンが善悪の唯一の判定者、正真正銘リセの校長先生だ!」》 (以上適当な拙訳なので間違っていたらごめんなさい)とまあ、おおよそこんな様子だった。トポールは二十数年後ラジオでこう言ったそうだ。「もしブルトンが一国の指導者となっていたら、そこにはきっとロシアと同じくらい巨大なグーラグ(労働キャンプ)ができただろう」
by sumus_co
| 2010-05-27 22:31
| 喫茶店の時代
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