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視覚の革命

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アラン・ジュフロワ『視覚の革命』(西永良成訳、晶文社、一九八三年二刷、ブックデザイン=平野甲賀)。ジュフロワの美術論集。四天王寺の一色文庫にて。

ジュフロワ(Alain Jouffroy)は一九二八年、パリ生まれ。アンドレ・ブルトンの著作から強い影響を受けた。一九四六年、ブルターニュ地方のユーゴ(Huelgoat)のホテルで偶然ブルトンと出会ったことから、シュルレアリストの一員となる。そこでブローネ(Victor Brauner)らグループの画家たちと知り合いになったのだが、しかし例によって一九四八年には何人かの画家たちとともに除名されてしまう。罪状は「分派的な動き」だった。

ネット上で読めるジュフロワへのインタビューによれば、除名から二、三年して、彼はブルトンに感謝の手紙を送ったそうだ。「除名していただいたおかげで、とても自由な気持ちになれました」とかなんとか。ブルトンはびっくりしてこんな返事をよこした。「生まれて初めてのことだ、除名して感謝されるなんて!」

「サド侯爵の遺言執行式」というエッセイにはジョイス・マンスール(ブルトンの愛弟子?)のアパルトマンで執り行われた不思議な儀式など、当時のブルトンたちのグループの活動が浮彫りにされている。図版にもなっているカナダの画家ジャン・ブノワの衣裳や仮面はかなり奇抜。

しかし興味深いのはやはりマルセル・デュシャンへのインタビューだろう。

《一般的にいって、私はとりわけ、もの描く男の精神をみる。その男が愚か者で、画家のように馬鹿な人間なら、そいつが天才的なものを描こうが描くまいが、私はまったく関心を持たない……それはとてもよくあることなのだが。しかしラウシェンバーグやジョーンズに関するかぎり、彼らはそのうえに、目をみはるほど頭がよい……だから、彼らに会い、話をし、彼らと意見をかわすのが楽しみなのだ。》

デュシャンならではの見方だと思って感嘆する。または

《地球のすみずみまでたやすくされた貿易と旅行のおかげで、中心という問題は無意味になった。同様に、地方主義というものの無意味になった。》《芸術の世界的中心地パリ、もしくはニューヨークといったことは過去のものであり、それはもはや勘定のなかには入らない、というのも、日本人までもがなかに加わることになったからだ。ところで日本絵画というものについても人は語りうるが、しかしこれは抽象表現主義的アメリカ絵画に大層よく似ている》

現在のインターネット時代にデュシャンが生きていれば、それみたことかというのだろう。「日本絵画」は何を指しているのか、具体美術かな……。

ジュフロワの問いにこういうところがある。

《ブルトンは一九二四年以降のあなたの行動が、まるでハラールへの出発後のランボーの沈黙に比すべきだとでもいうかのごとく、そのことに関し「呪うべきハラール」とさえ言っています》

チェスばかりして創作を休止したような行動についての言及なのだが、これに対してデュシャンはこう答える。

《私は絵画をやめたいという願望を口にしたことは一度もない……やめようと決意したことさえ一度もないのだ。私がやめたのはなかば怠惰のため、なかばアイディアの欠如のためだ。というのも、今しがた君にたいして間接的に言ったように、私は描くために描くということはしない……私は自分を言葉の職業的な意味において画家だと考えたことは一度もない。絵画とは、かなり定義しがたいある目的のための、数ある手段のなかのひとつだった。》

生きている、そのことがデュシャンの創作なのだろう。なんとなく青山二郎と意気投合しそうな発言だなと思う。
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by sumus_co | 2010-05-24 21:08 | 古書日録
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