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緋色の研究

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柳家三亀松(懐かしの名演芸)というなつかしい名前をコメントしてくださったので、もう少し緋色・赤色についてメモのようなことを書き留めておく。

赤に対応する単語はいくつかあり、それぞれのルーツがある。まずレッド(red)はサンスクリット語の「血(rudhira)」から。スカーレットはペルシャ語「赤い布」から。ヴァーミリオンはサンスクリット語の「虫(krmis)」から。虫というのは赤い染料の原料になる貝殻虫のこと。これはラテン語 vermis とアラビア語 girmizi(クリムソン crimson)の二つの枝に分かれる。他にコシヌス(coccinus)も虫である。それからミニウム(minium)は辰砂(硫化水銀からなる鉱物)から。ミニアチュールは赤い顔料を使った絵という意味(赤本ですな)。以上はおおよそ柳宗玄「色彩象徴の系譜」より。

『ヨハネ黙示録』では「赤い馬」が血と戦いの象徴、「赤い龍」が悪魔(レクター博士シリーズの「レッド・ドラゴン」!)、「緋色の獣」が悪魔的な町ローマを指している。

漢字の「赤」は火と人の組合せで、火を用いて禍害を防ぐあるいは祓う儀式。「朱」はおそらく硫化水銀の採取法から。「丹」は硫化水銀の朱を取る井戸から。「アカ」は「明け」(夜明けの空、昇る太陽の色)からか。

墓を朱色に塗ることはかなり古くから行なわれている。『卯殷』にみえており、朱は生の色=不死の色であるという(『字統』)。ヨーロッパ旧石器時代の人骨や副葬品も赤く塗られている(酸化鉄によるとも)。日本でも桜井茶臼山古墳(下写真、水銀朱が塗布されている)、藤ノ木古墳(大量のベニバナがまかれていた)などは真っ赤である。

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「緋縮緬」はむろん遊女を連想させるものだが、ローマでも中国でも古くから赤灯は遊女屋の目印であったし、十六世紀のリヨンでは娼婦たちは赤い腰紐をつけることを義務づけられていたという(宮下志朗)。遊女屋ではまた柿色の暖簾をかけたとも。非人、山伏、天狗や明治の囚人の服装でもあった(柿色については網野善彦『異形の王権』)。

要するに善くも悪くも、一般社会とは別の世界(死者の世界またはそれらの狭間)あるいはそこに住む人々、を象徴する色が「赤」だったのである。

還暦の赤い着物も人間世界から一歩あの世への境界へ入ったことを示しているに違いない。
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by sumus_co | 2010-05-20 21:34 | 古書日録
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