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ギボン自叙伝

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村上至孝訳『ギボン自敍伝』(岩波文庫、一九四三年)を読み終わった。自家用車のドアポケットに入れておいて待ち時間などにぼちぼち読んでいたのだ。これが和訳の初版で一九五一年と八八年(リクエスト復刊)、九七年に重版したようだ。元々はギボンの没後に遺稿としてシェフィールド卿が編集して著作集に入れた作品。

ギボンの主著『The History of the Decline and Fall of the Roman Empire』(1776-1788)は大正時代から飜訳されている。坂本健一訳『羅馬盛衰史』(隆文館図書、一九一八年)、同『羅馬中興史』(隆文館図書、一九二〇年)、村山勇三訳『羅馬帝国衰亡史』第1〜10巻(春秋社、一九二九〜三〇年)、同『ローマ帝国衰亡史』(岩波文庫、一九五一〜五九年)、中野好夫訳『ローマ帝国衰亡史』(筑摩書房、一九七六〜九三年)。そして自伝には他に中野好夫の長男中野好之訳の『ギボン自伝』(筑摩書房、一九九四年)がある。

ザックバランな自伝でなかなか面白かった。一七六一年に処女作『文学論』を出版するくだり。

《マレット氏は私が草稿を読むのを聞いた後、これを私の手から受取つてベケット氏に渡し、私の名で彼と契約を結んでくれた。これは楽な契約で、私はただ或る部数だけを要求するに留め、著作権は渡さないで出版の責任及び利益を本屋に委ねた。》

ギボンは『文学論』をフランス語で著していた。イギリスやフランス、スイスの著名な人物や知人に贈ったところ、フランスやオランダでは好意的に迎えられ、イタリアでは翌年に新版が出た。ところが故国イギリスではまったく無視されたという。

《殆ど読む人もなくて直ぐさま忘れられ、僅かな版がのろのろと捌かれ、本屋は滾し、著者はーーもつと繊細な感情を持つてゐたとすればーーこの英訳版の誤りや没趣味を嗟嘆したことであらう。その後十五年して私の「ローマ史」が出版されたことから人々は私の処女作を思ひ出し、この「文学論」を店頭で頻りに求めた。しかし私は、再版の許可を頼み込んで来たベケットにこれを刎ねつけたので、公衆の好奇心はダブリンの書肆が出した剽竊本でかつがつ満たされたに過ぎず、売物の中に初版本が見つかると、元の半クラウンの値が一ギニー乃至三十磅といふ丸で嘘のやうな価格に騰つてゐた。》

イギリスの貨幣はややこしいが、1クラウン=5シリング、1ギニー=21シリング、1ポンド=20シリング=240ペンス、ということらしいからかなりな高騰である。現在たまたまイギリスの古書店が一冊 AbeBooks.com に『文学論』こと『ESSAI SUR L'ÊTUDE DE LA LITTÉRATURE』(T. Becket & P.A. De Hondt. London., 1761)を出品している。お値段は「Price: US$ 23686.86」。本日1米ドル=0.65英ポンドなのでおよそ15400ポンド。

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こちらは奥付。うかつにも今はじめて気付いたのだが、検印紙に値段を示す星が印刷されているではないか(!) 囲み模様の左側。★★★。手近の岩波文庫奥付を片っ端から見てみると、昭和二年の創刊時から星付き検印紙だったようだ。おそらくデザインが変った戦後の検印紙からなくなったのではないかと思う。
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by sumus_co | 2010-04-20 21:26 | 古書日録
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