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新・読書の快楽

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『マリ・クレール・ジャポン』(中央公論社、一九八八年八月一日)。先月、郷里の物置で見つけた。対談が吉本隆明と中沢新一、執筆が中条省平、出口裕弘、瀬戸川猛資、風間賢二、巽孝之、小林康夫、伊藤俊治、目黒考二、荒俣宏。時代の縮図のようである。一九八四年九月号で『海』から移動してきたばかりの副編集長安原顯が企画した「特集:読書の快楽」によって廃刊寸前の『マリ・クレール』は完売を記録したという伝説があるらしい。そのシリーズのひとつ。

吉本・中沢対談は今読むとちょっとだるい感じだが、線引きのあった(小生が引いたもの)最後のところは今も同感する。人間変らないもんです。

《吉本[略]本って、とにかくカサバルでしょう。自分の寝起きしている住まいと本との格闘のようになってしまう。だから一年に一回ぐらい、売り飛ばしちゃうんですよ。それで、その時にどんな本が残るかというと、一つは、売っても安い本、これが一番残るんですね。それから速度ですね。速度に対して向こう側に、まだ、もしかすると耐えられるかもしれんぞという可能性が考えられる本が一応残されるわけです。で、よくよく観察していると、時間や速度に対して残りそうだと思える本と、安い本が、だんだん一致してくるのね。
中沢 ああ、それは本質的かもしれないですね。(笑)
 [略]
中沢 一番困るのは、『日本歴史の研究』みたいな学術書なんですね。ぼくの趣味から言うと、大体あの手の本の装幀が嫌いなんですよ。[略]その手の本が本箱の前面に出ていたりすると、なんだか気が滅入ってくるんですね。だからぼくはそういう本の前には安い本、新しい本、きれいな本を並べて、アカデミックな本は一切見えないように配慮をしているんですよ。(笑)》

とこれで対談終り。左手にあるのはやはり『マリ・クレール』の一九九二年五月号で、「書物の逆襲」特集。特集頁だけをはぎ取って綴じたもの。前年末に安原は退社していた(メタローグの設立へ動く)から書物特集でもテイストは少し違うようだ。巻頭は池田晶子が埴谷雄高に「書く」ということについてインタビューしている。残念ながらここには線引きはないが、結局哲学談義になって埴谷が終りの方でこういうことを言っている。

《明治維新後、積極的にいろんな学問を入れ、その中に哲学もあったのですが、「哲学」と訳したのがまずかった。》

西周発案の「哲学」については「哲学の訳字について」に詳しいが、初めは philosophia の直訳ふうに「希哲学」としていたそうだ。名付けが悪いと言われては、小生としても、困る……(?)

他に若々しい鹿島茂・谷川渥の「大放談」はちょっとした読物。鹿島氏はフロベールの『ブヴァールとペキュシェ』に触発されて万国博覧会のことを研究していると発言している。

《二人が万博を見に行くところがある。潜水艦や潜水夫に感心するんだけれども、ペキュシェの方は非常にノワールに見ているんだ。ペキュシェは、将来、世界は中国人が支配するようになると予見しているね。この中国人を日本人におきかえれば、もうクレッソン首相だ。》

中国人を日本人におきかえる必要がなくなっているのがコワイですねえ。なおクレッソン女史はミッテラン政権下の首相(女性としてはフランス初)。一九九一年に日本は「世界を征服しようとしている」と発言して日本政府からの公式抗議を受けた。
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by sumus_co | 2010-04-13 21:40 | 古書日録
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