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BIZZARE IX

b0081843_20295893.jpg

ローラン・トポールのデビュー作となった『BIZARRE』第九号の表紙。ジャン・ジャック・ポヴェールの発行していた文字通り「変な」雑誌である。トポールは当時売り出していた風刺漫画家Sinéのファンだった。シネもまた作品集をポヴェールから刊行していた。『Complainte sans paroles』(1955)、『Portée de chats』(1957)他。美術学校を卒業して職にも就かずイラストで食おうと思っていたトポールはいろいろなところに作品を持ち込んでいたが、なかなか採用されなかった。

シネのファンであり『BIZARRE』の読者でもあったトポールは思い切って、その異端の出版人、サド、アルトー、ジュネ、バタイユ、ヴィアンの発行者であるポヴェールの門を叩いた(当時はネル通 8, rue de Nesle にあった、左岸でポンヌフ橋の近く)。沢山のデッサンを描き込んだ分厚いノートを持って。

《ローランは何も言わずにデッサンを差し出した。彼はとても若かった。まだ何も発表していなかった。デッサンを見て、たちまち彼のオリジナリティに打たれた。他の誰の作品にも似ていなかった。ただちに『BIZARRE』に使うことを決めた。》

とまあ、これがポヴェール自伝にあるトポールとの邂逅シーンのおおよそのところである。だが、トポール伝の作者は次のように述べている。

《実際はそんなに即断ではなかった。ポヴェールはそこに独創性は認めたものの少しためらった。なにしろ全く無名の新人だ。ポヴェールは若いスタッフの一人に意見を求めた。その男性はしばらく大きなノートを眺めてからこう言った。「これは誰もやったことのない仕事ですよ! まだ水準には達していないし、達するかどうか分からないけれど、これはゼッタイ並のもんじゃない!」

 ポヴェールは傾いた。専門家がそう言うのだから。この作家はカリカチュアの専門家でもあった、すなわちそれは……ジャック・ステルンベールだった。》

ジャック・ステルンベール(Jacques Sternberg)はトポールの生涯の友人となる。表紙を飾った『BIZARRE』が出たときにトポールはボザール通のビストロ、シェ・マルヴザンでパーティを開いたそうだが、原稿料は一文(pas un sou)も支払われなかった。

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『BIZARRE』第九号、変わり種トイレの小特集ページより。書庫トイレ。世に言う「三上」(枕上・馬上・厠上)のひとつ。とまあ、こんな特集があるような雑誌である。またギャラが支払われなかったことについて理由が想像できる文章が二頁目に掲載されている。だいたいこんな内容。

発行が遅れて申し訳ない。もう発行できないかと危ぶんでいたのだが、なんとか出せた。少なくともあと二年は月刊で続けて行くつもりだ。売行きは悪くないものの赤字は何十万フランにのぼる。『ビザール』は儲けのためにやっているのではない、理解ある読者に応えたい一心である。ご不満の方は『La Revue des Deux Mondes』でも購読されたし!

『両世界評論 La Revue des Deux Mondes』は十九世紀の初め頃から続く文芸雑誌で、実際には、この『ビザール』が出た一九五八年には『La Revue, littérature, histoire, arts et sciences des Deux Mondes』という長ったらしい雑誌名になっていたようだ。一九八二年から元の名前に戻って現在も発行されている。『ビザール』は日本なら例えば晶文社の『ワンダーランド』みたいなもので、気に入らないなら「中央公論か新潮でも読んどきな」っていう啖呵になるかも。
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by sumus_co | 2010-04-08 21:57 | 古書日録
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