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一千円開店法

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商工会議所調査編『一千円開店法』(青山書店、一九二九年五月五日五版)。裏表紙。発行所の青山書店は名古屋市中区裏門前町一ノ二八、青山光次。小資本で開店する方法と要領を説明し、具体的な職種を並べてある。

化粧品店、文具店、玩具店、菓子店、小間物店、金物店、喫茶店、煙草店、などが婦人に好適な商売あるいは副業として挙っているのが目につく。ちょっと不思議なのが《素人で出来儲の多い薬剤店》……、化粧品や食品といっしょに売れば良いと書いてあり、実際そういう店が必ずどの町にもあった(今もある)ような気がするが、昭和初年頃には素人でも開店できたのか。

書籍雑誌店も《副業に好適で且品のよい》文化の先駆者として一章設けられている。要点だけ箇条書きにしてみる。

・品がよく定価販売であるから役所や銀行員の細君などの副業として容易い。

・千円で開店なら間口九尺奥行き二間あれば結構である。

・近隣の同業者の承認を得て書籍組合に入会しなければならない。加入金は五十円位。

・雑誌は取次販売所から委託販売として仕入れる。

・書籍は買入れになるので注意が必要。問屋に相談して二ヶ月位様子を見て不向きのものは交換する条件で仕入れること。

・小資本の店は専門的な種類を取扱わねばならない。立地や客の種類によって取扱うものを選ぶこと。

・学校などで広告ちらしなどを配る。会社へ出張販売をする。

・雑誌の利潤は一割、書籍では一割ないし二割位のものである。

・年々歳々、受験悲劇が起る程上級学校への入学志望者は増加して、学校も増設されている。一般人にも読書力が増えて行き、書籍雑誌店は今後きわめて有望である。

そして大取次店が、東京堂、北隆館、大東館、東海堂(以上東京)、金正堂、盛文館(以上大阪)、川瀬書店、小沢百架堂、星野書店、マガジン社(以上名古屋)、比較的小資本に便宜をはかってくれる取次が、春工堂(東京)、江之本書店、侵々堂[ママ](以上大阪)、文教堂、奥盛文堂、梶田文光堂(以上名古屋)というふうに列挙されている。

本書の初版は昭和三年としてあるが、「今後有望である」という見通しはでまかせではなかった。京都だけの数字で参考程度ながら『京都書肆変遷史』(京都府書店商業組合、平成六)によれば昭和十年の組合員数六三三名は現在までの最多を示している。

昨日紹介したアドリエンヌ・モニエも小資本で本屋を始めた。その心得というか心意気をこんなふうに述べている。

《お金はほんの僅かしかなかったし、そのために私たちは近代文学を専門に扱うことにしたのだった。》《たかだか三千冊ぐらいの本で店を開こうというのはわれながら大胆なやり方だと思っていた。実をいえばやっとひとつの壁面が本で埋められているだけだった。》

《全作品を取揃えてある作家の名前を知らせることにした。そのリストは私たちの趣味と一般読者のそれをつきまぜたものだった。成功するためには一定の譲歩が必要だと私たちは判断していた。》

《創り出さなければならないのは、そしてまた援助しなければならないのは、多数の読者を満足させるのではなく、個人的におたがいに知りあう可能性のあるグループ、そしてその願いを完全に叶えてやれるようなグループを満足させることを目ざす書店=文庫なのである。》

《とはいえ、ひとつの都会のどんな通りにおいてであれ、貸出と売捌を両立させるという原則に立つ賢明な本屋なら、容易にその趣味を形成できる読者はつねにいるものと思われる。》

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iPadが発表されたということで話題を呼んでいるが、ペンギン・ブログに昨年こんなリーディング・プレートとしての雑誌の姿が紹介されていた。

http://thepenguinblog.typepad.com/the_penguin_blog/2009/12/interfacing.html

÷

先日ここでも話題にした季村敏夫・内堀弘トークの直後の様子について、貸本喫茶ちょうちょぼっこの日記に「神戸残照」としてSさんがとても良い文章を書いているのでリンクしておく。

http://www.geocities.jp/chochobocko/
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by sumus_co | 2010-01-28 21:59 | 古書日録
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