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商店日米会話

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阿部彰編『商店日米英会話』(オリオン社、一九四六年九月三〇日)。年末に口笛さんで見つけたと書いたのがこれ。『日米會話手帳』(科学教材社、一九四五年)については以前触れたことがある。そのベストセラーに遅れること十一ヶ月。こちらも基本的には同じ会話の手引きだが、商店ごとの想定問答が英文と和文、そしてカタカナ(ひらがな交じり)とローマ字の発音が付きでかかげられている。

ひらがな交じりのカタカナ発音表記というのが著者苦心の作だろう。序文に阿部(「アドレス・ミシンの阿部商店主」という肩書き)はこう述べている。

《西洋人につき当つたら「ベーキング・パウダーと云ふのだよ」と、我が友は沙市に上陸第一歩の日、勝手に彼のズックのカバンを提げて、勝手に自分の宿へ案内した大陸ホテルの親父に教へられたさうだ。ベーキング・パウダーでも、ベグ・ユア・パードンでも、吾々の云ふ英語符牒論から云へば構つたことではない》

《ワリウォントと響くが、こちらはやはり ホワット ドゥー ユー ウォント と云ふべきだと、私は信じてゐる。
 「外国人であるこちらは正しく発音すること」とは、私が海外に旅立つとき、岳父慶応義塾大学教授馬場孤蝶が僕に注意した言葉だが、それをそのまゝ読者にプレゼントしたい。》

「ベーキング・パウダー」式の同音異義の例は昔からいろいろある。例えばパリのカフェで日本人の紳士がギャルソンに「シオカラくれ」と言ったら、ギャルソンはココアを運んできたという目撃談(小門勝二『荷風パリ地図』)。ショコラ・クレーム。また五木寛之『風に吹かれて』にはロシア語の「丼ウォーター」(ドブロエ・ウートロ=お早よう)、「千葉水郷」(スパシーボ=有り難う)などの例が挙っていた。あるいは米国人には「お好み焼き」が「エコノミー・ヤキ」に聞こえるとか……。

この序文とは裏腹に本文の「英語符牒」は発音をできるだけ耳で聞いたとおり忠実に再現することをこころがけているように思われる。なお「岳父」というからには阿部は馬場孤蝶の娘をめとっていたか。

商店日米会話_b0081843_20155865.jpg


じつは大晦日に届いた「[書評]のメルマガ 」vol.439 で守屋淳氏が取り上げておられる池谷裕二『怖いくらい通じる カタカナ英語の法則』(講談社ブルーバックス)が気になったので話題にしてみた。そこに

《多くの日本人はanimalを「アニマル」と発音します。たしかに英語の授業でもそう習いました。でも、この発音ではいつまで経っても通じることはないでしょう。理由は単純です。割り当てるカタカナが間違っているのです。本当は「エネモウ」と言わないといけないのです》

という著者で脳学者の池谷裕二の文章が引用されていた。しかし単純に「アニマル」が「エネモウ」になったから通じるというものでもないだろう。大事なのはアクセントの位置のように思う。そして音のヴァリエーションだけでなくその強弱をなんとか表記しようというのが『商店日米英会話』の試みなのだ。

ただそのため発音符牒の説明が複雑になり、八頁にわたってしまった。五十頁しかない冊子なのに。しかもこれを忠実に発音するには、結局のところ、相当な英語体験が必要のようだ。『日米会話手帳』のカタカナ英語が受け入れやすいのもよく分かる。

ちなみに日本で「ベストセラー」という言葉は戦後のこの時期から使われるようになったらしい。戦前は「当り本」「ヒット本」「売行き良好本」などと言ったそうだ。
by sumus_co | 2010-01-02 22:32 | 古書日録
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