『原野コレクションⅡ EX LIBRIS(蔵書票)―夢二から現代作家まで―』図録(関西学院大学博物館開設準備室、二〇〇九年一〇月一九日)。二〇〇七年に原野賢吉より関西学院大学に寄贈された厖大な蔵書票などのコレクションから構成された展示(展覧会は12月18日まで)。
エクスリブリスというのもまた一種独特の世界である。以前に木版画で蔵書票を作る講座を精華大でやらせてもらったくらいだから、小生も嫌いじゃないが、あまりのめり込みたくはない。この図録だけで、ざっと見ていても、夢二、棟方志功、芹沢銈介、恩地孝四郎あたりがやはりどうしても目立ってしまう。なかで、新鮮に写ったのが
板祐生(いたゆうせい、本名板愈良(いたまさよし))、色が渋い。
ここに掲載されている熊田司氏の論考「蔵書票と日本人」には蔵書票趣味の淵源として検印紙が取り上げられていて、教えられるところが大だった。検印紙の古い例についてこう書かれていた。
《明治8年(1875)に、官板から民間の修静館に版元を移して刊行された『輿地誌略三篇』などが古く、民間刊行物にはじまった慣例であるが、明治14年(1881)刊の『小学唱歌集』の頃から政府刊行書にも見られるようになる。》
検印紙(証紙)には注意していたつもりだが、民間が先だったとは認識していなかった。官板の方が早いと思っていた。たしかに「
奥付検印紙日録=明治十四年」を見ると『小学唱歌集』の他は民間ばかりである。これは認識を新たにしないといけない。