東京駅丸の内口。煉瓦建の駅舎は現在改修中。この少し南にある「ヴィロン Viron」にてバゲット・レトロドールを購入せよという指令が某所から出ていたたため帰洛前に立ち寄った。見た目はまずまずのようだったので、レトロドールとファリネとパン・ド・カンパーニュを買うことに(味もまずまずといったところ)。
今調べてみると、「ヴィロン Viron」というのはパリの南西ボース(Beauce, 大聖堂で有名なシャルトルがある地方)で一八一五年に創業したというフランスの製粉会社「Les Minoteries Viron」の粉を使っているところからきているらしい。ヴィロン製粉はレトロドールというバゲット用の粉を製造し、レトロドール・ファミリーを作ってそのフランスの伝統的な味を普及させているようだ。
http://www.retrodor.com/index2.htm
その後、荷物をコインロッカーに預けて、昨夜、トークにきてくださったNさん夫妻に是非見ておくように勧められた、上野の国立博物館で開催中の「皇室の名宝」展へ。駆け足で。「春日権現験記絵」が素晴らしいからとのことだったので、それだけを目指す。入場制限で10分待ちだった。案の定、ショーケースの前は一様に中高年の来場者で占められており、とにかくも人の垣根をぬって「春日権現験記絵」だけは目に焼き付ける。
人物の描写はやや固めか。絵師は高階隆兼(たかしな・たかかね)とされているが、複数の手が入っていることは確か。工房作だろう。風景や植物の描き方はかなりの手練を思わせる。水鳥のシーンはじつに楽しい。庶民から貴族まで、モチーフとして選ばれた画面、またさりげなく人間的な仕草を織り込んだ構成も見事。鎌倉時代の日常の暮らしを眼前に見る思いがした。
銀座線上野から半蔵門線三越前で乗り換え清澄白河へ。深川いっぷくへ戻り、T氏と合流。渋谷のウィリアムモリスへ案内してもらうことを約束していた。ウィリアムモリスは半蔵門線渋谷と表参道のちょうど真ん中あたり。表参道駅からだと中村書店の角を北へ(右へ)曲がり、最初を左へ入って次の路へ出る少し手前右側二階。おいしい珈琲と渋い内装に感服。ギャラリーとしても活動しており、毎年六月に本に関係した企画展をやっておられるそうで、来年は『ちくま』の表紙画展をやらせてもらえることになった。いろいろ話しているとオーナーの方は武蔵美の油絵出身、しかも同じ時期に在学していたことが判明。人のつながりはふしぎである。
半蔵門線で大手町、丸ノ内線で東京、夕刻の新幹線にて帰洛。