笠原昌介訳『ラフォルグ詩集』(中村書店、一九六〇年八月一〇日)。下になっているのは以前紹介した
加藤八千代『子供の夕暮』(中村書店、一九五九年一一月)。『日本古書通信』964号が届いたので「書肆ユリイカの本・人・場所」(十月五日に東京古書会館で行なわれたイベントの記録、奥平晃一+田中栞+郡淳一郎)をまず読む。現場で拝聴したかった。これは有り難い記事だ。そこに中村書店が出てきた。
《郡 明治・大正以来、日本には連綿と続いてきた美しい詩集の系譜があるわけですが、その中で「書肆ユリイカの本」について奥平さんはどんな風に見ていらっしゃいますか?
奥平 伊達さんは出来上がった本のかなりの部数を渋谷の中村書店へ持って行っています。ですから中村三千夫さんがお元気でいらっしゃれば、本当に正確な情報を得られただろうと思います。
私が感心するのは、昭和二十年代というあの本当に物がなかった時代に、伊達さんが知恵をしぼり、材料は良くなくても見栄えのする、そして奇を衒わない、飽きのこないスマートなデザインをお考えになったということです。》
奇を衒わないと言えば、ここに挙げた中村書店の本などは本当に奇を衒わない、なんということもない佇まい、それがまた何とも言えず良いのである。三冊だけの出版とは残念至極。もう一冊は少々お高いので入手するにはちょっとばかり勇気がいる、あ、いや、◯が要る……。それにしても書肆ユリイカの本をよく知っていた中村書店主がこういう素っ気ない本を造ったところにも興味が湧く。それなりのこだわりがあったに違いない。